”迷惑客”の宿泊拒否可能に 改正旅館業法、今年12月から施行へ
2023年10月11日(水) 配信
改正旅館業法の円滑な施行に向けた検討会(座長=玉井和博・立教大学観光研究所特任研究員)は10月10日(火)、今年6月に迷惑客の宿泊拒否を可能にする改正旅館業法が成立したことを受け、要件の具体例を示した指針案を取りまとめた。今年12月の施行に向け、今後パブリックコメントを経て、正式決定する。
同案では「ほかの宿泊者に対するサービスの提供を著しく阻害する恐れのある要求について宿泊拒否の対象となる」とした。
不当な割引や客室のアップグレード、契約にない送迎のほか、従事者への土下座や特定の者にのみ自身の応対をさせること、泥酔しほかの宿泊者に迷惑を及ぼす恐れがある宿泊者が、長時間にわたる介抱を繰り返し求めた場合などに、宿泊を拒否できると示した。
一方、配慮を求める障害者などの宿泊拒否につながらないよう、「旅館は障害を理由として宿泊を拒むことはできない」と明記した。
今回の指針案では、障害者が車イスで部屋に入れるようにベッドやテーブルなどの位置の移動を求めることや、車イス利用者がベッドに移動する際に介助を要求すること、発達障害のある人が待合スペースを含む空調や音響などの設定の変更を求める行為などは、宿泊拒否の対象外とした。
このほか、来館時または宿泊中に1類、2類感染症の症状を呈している人については、宿泊施設が体温の確認など感染防止対策への協力を求め、みだりに客室から出ないことを求めることができるとまとめた。
なお、昨年10~12月の国会で提出された当初の改正案では、宿泊施設は発熱などの症状がある客に感染対策を求め、正当な理由がなければ宿泊を断ることができるとしていた。しかし、ハンセン病の元患者などから「差別を助長する」などとして反対されたことから、宿泊を拒否できるとした箇所を「協力を求めることができる」と変更した。検討会では、協力に応じない場合でも、宿泊を断ることができないこととした。
厚生労働省は同案の正式決定後、まずは都道府県に相談窓口の開設を促す。そのうえでホテル・旅館向けの窓口は、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)と日本司法支援センター(法テラス)が担う。利用客には消費生活センターなどが応じる。