「津田令子のにっぽん風土記(102)」玉山金山の魅力を後世に~ 岩手県・玉山金山編 ~
2023年11月3日(金) 配信
大阪で生まれ、小学校4年生の3学期から東京の小学校に転校し60年近くを東京で過ごしてきたという住田幸司さん。根っこはやはり関西人の虎キチだとおっしゃる。西武百貨店スポーツ館に就職し、結婚を経て父親の会社の関係から活躍の場は海外に移り、以降30年余りを海外で過ごしてこられた。
現在の関心事は、自然を体感できる趣味として20代後半から春と秋に元山岳部の先輩と訪ねている渓流釣りだという。
「東日本大震災を契機にインフラ整備という名の元に自然が文明の脅威に蝕まれ、さらに過疎化の進行によって放置される家屋や杉の植林地に無計画な伐採事業によって大規模な山抜けで渓流の崩壊が起きています」と危惧する。「淡水魚の減少、それに伴う釣り人の減少など地域観光の減収や保持保全資金が枯渇することでさらなる荒廃につながってしまっています」と分析なさる。
そういった状況下で2年前に岩手県の玉山金山と壺の沢などを活性化する竹駒牧野採草地農業協同組合の及川賢治さんと出会った。「次世代の人たちに繁栄の根に何があったのかを知ってもらうためにはどうするべきか。自分が楽しんで生きてこられたことへの恩返しとして地域遺産の保護保全運動や啓蒙活動を考えるようになったのです」と住田さん。「玉山金山は、行基によって天平年間(729―749年)に発見されたと伝えられていて、行基菩薩腰掛岩や、千人抗の「オソトキ伝説」など、さまざまな伝説が残されていてとても興味深いんです」と話す。
先週訪ねた際にも恒例の及川さんを囲んで、温泉宿の玉乃湯で「玉乃湯夜会」が行われた。玉乃湯は、工夫たちも鉱泉として利用していたといわれ疲労回復などにも良いという。玉乃湯自炊部の始まりだ。増改築を行い日帰り入浴と宿泊施設として生まれ変わった。今は陸前高田市の指定管理を受け運営している。日帰り入浴もオッケーで素泊まりは5500円とリーズナブル。
「現在、竹駒牧野採草農協(募集は玉乃湯)では3月末から11月末までの毎週末に2時間ほどの行程で金山探訪ツアーを実施していますので歩いて魅力を感じてもらい、この自然をどう守り後世に伝えていったらよいのか一緒に考えてもらえたら」と笑顔で語る。
この10月にNPO法人ふるさとオンリーワンのまちの賛助会員になった住田さん。「まずは玉山金山に再び光を当てることを実現したい」と力強く語る。
津田 令子 氏
社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。