訪日客消費額年内にも5兆円か 四半期ベース過去最高値に(観光庁長官会見)
2023年10月20日(金) 配信
観光庁の髙橋一郎長官は10月18日(水)に開いた会見で、2023年9月の訪日外客数が19年同月比3・9%減の218万4300人となった。また、7~9月期の訪日外国人旅行消費額は同17・7%増の1兆3904億円。四半期ではコロナ前の水準を上回り、過去最高となった。また、1~9月の累計では3兆6326億円にのぼり、観光立国推進基本計画で目標に定めた「25年までに消費額5兆円」に年内にも達する見通し。
1人当たりの旅行支出は21万810円となり、目標額であった20万円を超えた。
髙橋長官は、「四半期ベースでは目標額を超えたが、年間を通して判断していきたい」と話した。
費目別にみたとき、宿泊費が34・2%(19年同期は29・9%)と最も多く、次いで買い物代が26・1%(同33・2%)、飲食費が22・9%(同22・0%)となった。
コロナ前の19年同期と比べると、宿泊費・飲食費・交通費・娯楽等サービス費の構成比が増加し、買い物代の構成比が減少した。
観光庁は、「1人当たりの買い物代の最も大きい中国人観光客の回復遅れがおもな原因かと思われる。全体としては、娯楽等サービス費のうち、テーマパーク・博物館・美術館などの購入率が増加している。また、買い物代では酒類などの購入の増加が見られる」としたほか、「インバウンドの平均泊数が伸びたことや、円安・物価上昇などの影響が消費額増加につながったのでは」と分析した。
中秋節・国慶節の大型連休を迎えた中国については、日本政府観光局(JNTO)を通して現地の旅行会社にヒアリングしたところ、極端な旅行控えの傾向はなく、影響は限定的であるとした。なお、9月の中国人訪日客数は19年同月比60・2%減の32万人5600人となり、前月に引き続き回復率が上昇している。
観光庁は、「中国人旅行者の動向や実績に注視しながら、訪日プロモーションに取り組んでいく」考えだ。
□オーバーツーリズム対策 パッケージ取りまとめへ
髙橋長官が議長を務める「オーバーツーリズムの未然防止抑制に関する関係省庁対策会議」は10月16日(月)に第3回会議を開き、対策パッケージ案を取りまとめた。パッケージは、「観光客の集中による過度の混雑やマナー違反への対応」「地方部への誘客の推進」「地域住民と協働した観光振興」──の3本柱で構成し、18日(水)の観光立国推進閣僚会議で決定された。
このなかで、地域住民と協働した観光振興では、地域の実状に応じた混雑対策を促進するため、地域の関係者による協議に基づく計画の策定や取り組み実施への包括的な支援を、全国約20地域で行い、先駆モデルを作り出す考えだ。
これらのモデルはほかの地域にも横展開し、各地域における課題解決に係る相談窓口を観光庁に設置するなど、各省庁が連携して支援する体制を整備する。
□TEJ2023開催 「需要の起爆剤に」
ツーリズムEXPOジャパン2023大阪・関西は10月26(木)~29日(日)、インテックス大阪(大阪府大阪市)で開かれる。「25年大阪・関西万博へつなぐ」をテーマの1つに挙げている今大会では、世界70カ国以上の国・地域が出展するほか、公式行事としてジャパン・ツーリズム・アワード表彰式やUNWTO世界観光倫理憲章署名式、第6回TEJ観光大臣会合などが行われる。
髙橋長官は、「久しぶりに入場制限のないなかで開催される。TEJは国内旅行・インバウンド・海外旅行・観光復興・地域活性化──などさまざまな切り口から大変な意義を持っているイベント。観光需要のさらなる起爆剤となり、25年万博への機運醸成につなげていければ」と期待を寄せた。