【名鉄観光バス・加藤 信貴社長インタビュー】日本一の安全と「最高の接客」追求
名古屋鉄道グループの名鉄観光バス(加藤信貴社長、愛知県名古屋市)が、発足6年目の2014年度決算で、営業収益が4期ぶりに70億円を超えた。新運賃制度や燃料価格の下落など外的要因もあるが、11年の東日本大震災の大きな落ち込みのなかで、あえて投資をして安全性、快適性を追求する新型車両の導入と、乗務員教育を徹底してきた取り組みが、大きな成果に結びついてきた。日本一の安全と、最高の接客を目指す同社の加藤社長に今後にかける意気込みを聞いた。
【聞き手=関西支社長・有島 誠】
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「バスの中は旅の一部だ」
――まず、2014年度の営業実績を伺いたい。
14年度は良い成績を残せました。旅行部門は苦戦しましたが、全体では営業収益が前年度比6%増で4期ぶりに70億円を超えました。当社は08年に名鉄グループのバス3社が合併して設立しましたが、リーマンショックの後遺症や鳥インフルエンザの影響、さらに11年東日本大震災が発生するなど、厳しい経営環境が続きました。私が社長に就任したのがまさに震災の年。大変苦戦しましたが、14年度で大きく回復でき、営業利益も過去最高となりました。
――大幅回復の要因は。
震災後に落ち込みを挽回するため、毎年20両程度を最新の安全装置とさまざまな快適性に配慮したバスにグレードアップしてきました。私は「バスの中は旅の一部だ」と思っており、リラックスできて、楽しくなければいけません。
「おもてなし車両」と銘打って、安全面ではドライバーモニターや車線逸脱警報、衝突被害軽減ブレーキ、車両安定制御システムなど装備し、最大限に配慮しました。一方で、シートを包み込むようなバケット式にして、長距離移動時の快適性を向上させたほか、すべてのシートにコンセントを設置したり、プラズマクラスターで空気を清浄するなどして、車内環境の改善もはかりました。
DVDなどを流す液晶モニターは、前列から後列まで3カ所に設置し、それぞれの座席から近距離で映像を楽しめます。元々、“動く会議室”的な用途も兼ねて設置しましたが、結果的にシニア層に喜ばれ、ガイドの案内を字幕表示できることから、耳の不自由な方にも大変喜ばれています。車内の床をフラットにして歩きやすくしたこの車両は、当初25両導入し、今年度さらに10両増車します。
そうした新車両導入で運賃単価が上がり、営業収入がアップしました。さらに新運賃制度や燃料価格もプラスに作用したことが、大きな要因であったと感じています。
――ソフト面での取り組みは。
運転士やガイドの「おもてなし」をさらに強化しています。とくに運転士の接客向上として、車内あいさつを朝だけでなく、帰路も行うようにしました。これは乗務員からの提案です。心をこめて旅を楽しんでもらう。その思いを伝えていく。お陰でお客様からの評価も上がりました。
自動ブレーキを装着し、安全性を向上させた車両は今年度末には大型車250両のうち91両の規模になりますが、これは他に類を見ない規模ではないかと自負しています。日本一の安全と最高の接客を目指します。
乗務員の健康管理も強化し、選任保健師と担当医師が現場を回って、健康状態をチェックしています。また、福利厚生ハンドブックを作り、生活習慣病予防健診の補助を拡大したり、予防接種は家族も補助する制度を導入しています。
――ガイドについてはいかがですか。
お客様が高齢化するなかで、いかに満足度を上げていけるかが課題です。ガイド全員に救急救命士の講習を受けさせて、緊急時の対応も可能にしているほか、旅程管理主任者の資格を取得させて、旅の安全を基本とする「おもてなし」を大切にしています。
新人ガイドは、今年は40人が入社しました。今後も毎年40―50人規模で考えていきます。今年は男性ガイドも1人入社しており、話題性もありますが、男性目線のガイドも今後必要になるでしょう。
――15年度の目標と将来展望は。
4期連続の黒字化を目指します。そのためにハード、ソフト面での充実をより重視していきます。加えて、お客様に選んでいただける商品を作ることです。
最上級バス「ゼウス」2両を使った高額ツアーは、これまで催行中止がありません。リーズナブルから高額まで「2極対応」が必要だと思っています。
27年開業予定のリニア中央新幹線も、今後視野に入ってくることから、インバウンド市場も含めて周辺環境は大きく変化することが予想されます。訪日旅客が大幅に増加するなか、受け入れ側としてさまざまな課題をクリアするための検討も進めたいと考えています。