国立公園で滞在型推進 宿中心に利用拠点の魅力向上(環境省)
2023年11月8日(水) 配信
環境省は今年新たな検討会を立ち上げ、宿舎事業を中心に国立公園利用拠点の面的魅力を向上させる方向性を示した。オーバーツーリズム対策として、観光客を地方分散することも狙いのひとつ。
地域が持続可能で責任あるカタチで観光業を営める環境を整備し、保護と活用の好循環を目指す。高付加価値の滞在型観光の推進へ動き出した同省。自然環境局国立公園課の山崎麻里課長補佐に、話を聞いた。
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日本の国立公園の魅力は、美しい自然とそこで自然と共に暮らしている人々の文化や歴史が凝縮されていることです。
一方で、各国立公園の知名度は国内の方でも高くなく、旅行などの目的地にはなることも少ないのが現状です。環境省では現在、「その自然には、物語がある。」をブランドメッセージに掲げ、ブランディング活動を進めています。
今年1月からスタートした「宿舎事業を中心とした国立公園利用拠点の面的魅力向上検討会」は、2008年から環境省が進めてきた「国立公園満喫プロジェクト」の新たな展開として、高付加価値の滞在型観光を推進するものです。外国人観光客が再び増加しオーバーツーリズムが問題となるなか、国立公園における高付加価値の滞在型観光を推進することは、日本の各地方に観光客を分散することにも貢献すると考えます。
そのために環境省は、魅力的な自然環境を基盤とし、地域の歴史や文化、生活を踏まえて、本物の価値に基づいた感動や学びの体験を提供していくことを目指します。
例えば、宿泊施設と自然体験アクティビティが連携し、地域の人がガイド役となる体験プログラムの用意や、宿での地産食材を使った料理の提供による、地域が持続可能で責任あるカタチで観光業を営める環境が整備できれば、保護と活用の好循環にもつながると考えています。
これまでの検討会を踏まえ環境省では、十和田八幡平国立公園の十和田湖地域(青森県・秋田県)、中部山岳国立公園の南部地域(長野県・岐阜県)、大山隠岐国立公園の大山蒜山地域(鳥取県・島根県・岡山県)、やんばる国立公園(沖縄県)――の4カ所を滞在体験の魅力向上のための先端モデル事業の対象地に策定しました。
今後、選定された4つの国立公園を有する各地域で宿泊体験や磨き上げを行う利用拠点の方向性などを取りまとめた基本構想案が作成されます。
これを踏まえ環境省では、24年度中に利用拠点を選定することを目指すとともに、来年度以降、利用拠点のマスタープランを策定し、地域共同実施体制を構築します。利用拠点は1―2カ所の想定で、宿泊施設の誘致は25年度以降となる見込みです。
先端モデル事業では宿を核とはしますが、大切な柱は利用の高付加価値化のビジョンを地域で共有することや、環境整備の方向性と訪れる人に提供する体験コンテンツです。それと同時に、過疎や防災などの地域の課題解決に資する事業であることも求められています。併せて、自然保護費用の負担を施設利用者などにもお願いできる仕組みも検討していきます。
核となる宿泊施設に関しては、「感動」と「学び」の滞在体験を提供する宿泊施設であること、持続可能な観光の観点から「国立公園の保護と利用の好循環に貢献する姿勢」を持つ施設を想定しています。
ただし、誘致する地域の考えや実情に応じ、具体的な要件はマスタープランの策定時に具体化させていきます。