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「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(154)できることを増やすためにやってみよう 頭では分かっていても

2023年11月19日(日) 配信 

 

 先日、ある寿司屋に行ったとき、素晴らしい人に出逢いました。初めての店でしたが、ビルの狭い通路の奥にエレベーターがあり、2、3人が乗るといっぱいになってしまうという非常に狭いものでした。

 しばらく待つと、エレベーターが降りてきたので、同行者と乗り込んで行き先ボタンを押したときです。

 その狭い通路を急いで入って来た人がいました。「次のエレベーターに乗ってもらいたい」と一瞬考えたのですが、「ご一緒させてください」と声を掛けられ、一歩奥に詰めて行き先ボタン前に、その人のスペースを空けました。

 ところが、その人は行き先ボタンを押しません。私たちと同じ店に行かれるようです。エレベーターが目的の階に到着すると、「お先にどうぞ」と、「開」くのボタンを押しながら、全員を先に降ろしてくれたのです。その素晴らしい行為に、とても感動しました。

 寿司屋では、一緒に行った人と席に座ってそのことを話しましたが、「そんなこと言ってましたか」と、その人が気付いていないことに、びっくりしました。狭いエレベーターなので、聞こえないはずがありません。

 私が感動した素晴らしい言葉は、恐らく右から左に通り過ぎて行ってしまったのだと思います。「感じる力を身に付けましょう」と言い続けていますが、アンテナの感度が低いと同じ事例に出逢ったとしても、その素晴らしさをキャッチすることができないものなのです。

 この行動や言葉が素晴らしいものだと、私たちは気付かずに見逃してしまっているのかもしれません。日常の中で仕事に生かせるような多くの機会を見失うことは、非常にもったいないことです。

 その出来事の数日後です。エレベーターを使おうと歩き始めたとき、「よし、あの素晴らしい言葉を、この機会に使ってみよう」と思ったのです。ところが、いざとなると「ご一緒さ、させて下さい」と、舌を噛んでしまいました。

 言うべき言葉は、エレベーターに向かうまでは、頭の中にはっきりとありました。心の中で、何度も繰り返してみました。しかし、その場になると、上手く言葉にすることができなかったのです。

 知っていることを増やしましょう。たくさんの「これが素晴らしいおもてなしだ」という事例を集めましょう。そして、それを自らの仕事に生かせるように、自身の仕事に置き換える力を高めましょう。その次に、頭で分かっていてもできないことは多くあります。やってみて、できることを増やして行きましょう。

 自らの失敗の中に、講演のたびに繰り返し伝えていた大切さを改めて強く感じました。

 

コラムニスト紹介

西川丈次氏

西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。

 

 

 

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