小松市でGEMBAモノヅクリエキスポ開催 産業観光として通年販売や訪日ツアーも
2023年11月10日(金) 配信
石川県小松市は伝統的な九谷焼から織物、鉄、石材、酒など多様な産業が集積する。ものづくりの「現場をひらく」プロジェクトとして、2年前から「GEMBAモノヅクリエキスポ」を開き、産業観光として広く一般に工場・工房を開放してきた。3回目となる今年は11月2~5日に「GEMBAモノヅクリエキスポ2023」を開催し、38社が47プログラムを展開した。来年3月の北陸新幹線延伸を控え、今後はプログラムの通年販売や、訪日観光客対応ガイドによるツアー販売などに力を入れる。エキスポの前日から1泊2日で行われた旅行会社やマスコミを対象にしたモニターツアーに参加した。
□“ホンモノ”分かる観光客に 産業観光の産業化を
北陸新幹線が敦賀まで延伸すると、小松は首都圏から新幹線一本でつながることになる。また、市内には市街地から非常に近い小松空港もあり、アクセスは抜群だ。
一方で、小松市交流推進部の山本ゆかり部長は「小松市は大量の観光客を望んではいない。『ホンモノ』が分かるお客様に来ていただきたい」と量より質の観光施策だと断言する。
こだわりぬいた本物のものづくりが集まる所以でもあるが、それを堪能できるのが「GEMBAモノヅクリエキスポ」だ。
プロジェクトを主催するのは、GEMBAこまつものづくり未来塾(事務局=こまつ観光物産ネットワーク)。こまつ観光物産ネットワーク観光振興マネージャーの岡谷昭宏氏は狙いを「産業観光の産業化」と示す。観光客にとって産業観光は魅力的なコンテンツだが、事業者にとってはボランティアに留まっているのも実情だ。「課題への挑戦として、GEMBAでどう解決するか。先駆者の新潟県・燕三条の工場の祭典や福井のRENEW(レニュー)などに追いつけ追い越せで、プラットフォームになっていきたい」と力を込めた。
そのために「GEMBA」は3つのメリットを意識。まず参加者事業者にとっての利益を創出したうえで、魅力を生かせるプログラムを展開する。また、地域にとってもメリットがなければならない。地域住民にも取り組みを知ってもらい、シビックプライドの醸成につなげていく。さらに来場者にとっては魅力的なプログラムを用意し、モノづくりへの理解を深めてもらう。
10月からは14社が参画し、通年プログラムの提供を開始した。現在は英語ガイドの育成も進めており、インバウンド向けツアーも11月下旬から販売予定だ。
モニターツアーでは実際のプログラムから数カ所を巡り、体験や見学を行った。
□魅力的な産業観光コンテンツ
このうち、鉄工所・IRON WORKS KORU(アイアンワークス)では、鉄板から世界に1つだけのフライパンづくりが体験できる。鉄職人・酢馬慶太氏の丁寧な手ほどきで、未経験でも鉄を熱して叩いてを何度か繰り返し、1時間半ほどで完成に漕ぎつけられる。「鉄マニア」を豪語する酢馬氏が熱心に鉄の扱い方や使い方を説明してくれるため、一見ハードルが高い鉄フライパンのメンテナンスも安心だ。アイアンワークスは通年プログラムの参画事業者。
創業100年を超える小倉織物は、後染洋装専門のシルクジャガード職人工房としては日本で唯一。最終商品を生産していないため、小倉織物の名前は世には出ないが、世界有数のハイブランドから指名が入り、さまざまなブランドとコラボレーションしてきた。同工房では熟練の職人の技や工場内見学、手掛けた商品の秘話などが聞ける。こちらも通年でリクエストを受け付けている。
県内の南加賀エリアで新年に縁起菓子として食べられているという「辻占(つじうら)」。菓子のなかに、占いが入っている地域独自の“フォーチュンクッキー”だ。材料は餅粉と砂糖とシンプルだが、見た目は正月菓子らしく華やかで可愛らしい。製造を行っている長池彩華堂では、占いの紙を餅粉で包むマイ「辻占」作りが楽しめる。こちらは11、12月の季節限定プログラムだ。
このほか、モニターツアーでは九谷焼の原料となる粘土を100年以上作り続けている二股製土所や、祖父の酒蔵を引き継ぐ若い蔵元杜氏がこだわりの木桶で酒造りを行う西出酒造などを訪れ、小松の幅広い産業観光の魅力に触れた。
なお、西出酒造では土曜日に「蔵CAFEぐるり」をオープンしており、日本酒の仕込み水で淹れるコーヒーを求めるファンも多いという。