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「提言!これからの日本観光」 「上野駅」

2023年11月14日
編集部

2023年11月14日(火) 配信

 昔のことになってしまったが、旧国鉄の営業関係者にとって「上野駅」という「駅」は忘れられぬ思い出の多い駅であった。

 当時の国鉄では駅の管理と運営は、地域ごとに設けられている鉄道管理局が担当していた。しかし、「上野駅」は東京の北の玄関口として乗降客がとくに多い。しかも東北各地から東京に働きに来ている方々が多く、その方々が一斉に帰省される盆と暮、ゴールデンウイークは異常ともいえる大混雑となるので、本社もこの混雑緩和のため、上野駅に直接、応援に出向くほどであった。

 加えて、この時期の“上野駅の混雑”状況はマスコミでも毎年、詳しく報道されいつの間にか“季節の風物詩”のようにさえなってしまっていた。そして、その都度旧国鉄にサービス改善への要望が高まっていった。

 当時、国鉄は財政難だったこと、また上野駅の複雑な立地と構造からその抜本的な改善は容易ではなかった。やむなく駅側と毎年混雑期の前に、対策会議を開き、混雑時は上野駅に所管の鉄道管理局が「対策本部」を設けて対応してきた。

 「駅」の混雑対策は「駅」の責任で行うのが普通であるが、混雑が異常なので、管理局と駅が共同で臨時の「対策本部」を設け、ダイヤ設定や料金制度を決定する役割をもつ本社もここへ直接、参画して、対応する特別な態勢をとってきた。

 そして「上野駅」の混雑緩和のため、混雑時には奥羽線方面への列車は品川発としたり、混雑する東北への夜行列車の発車時には、上り列車を日暮里止まりとしたり、今では考えられないような思い切った対策をその都度、本社と支社、管理局、駅で協議し、実施するという非常態勢で臨んでいた。

 私も本社の担当者であったころ、年末の「上野駅」へ応援に行き、夜遅く超満員の秋田行臨時“つばさ”が無事発車できたのを見て、ホームに出ていた他駅や管理局からの応援の職員同士が互いに握手して、無事年末輸送が完遂できたことを喜び合ったことを思い出す(超満員列車で喜ぶどころではないのだが、残客なしで全員乗っていただけたということで)。

 現在「上野駅」の年末、旧盆時などの混雑は諸対策が奏功したことと、残念ながらお客様の数が自動車への転移で減少したこともあって、とくに話題になることも少なくなった。

 しかし、今なお何となく「上野駅は混雑する」というイメージをお客様に与えてしまった残念な結果が残っているように思う。

 駅も毎年新しい混雑対策を検討して実施、年末も旧盆も今ではかなりスムーズにご利用いただけるようになっている。しかも、混雑期の「座席指定」列車の増便も実現し「昔と違う帰省列車・上野駅」に変わりつつある。混雑を避けて自動車などに移行された方々にも、今一度「楽な帰省」ができるようになりつつある「上野駅」からの列車帰省をしていただきたいものと思う昨今である。

 

 

須田 寛

 

日本商工会議所 観光専門委員会 委員

 
須田 寬 氏
 
 
 
 

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