〈旬刊旅行新聞12月1日号コラム〉――「日本ツーリズム・オブ・ザ・イヤー2023」発表 いち早く新たな需要の開拓や課題解決へ
2023年12月1日(金) 配信
2023年も残り1カ月。また1年間を振り返る時期となった。そして、この時期には、飲み会も増える。そういえば、この数年、飲み会自体が無かった。コロナ禍が抜けて、様変わりした世の中を感じる。
1年の終わりには、酒が旨く感じる。年明けの1月や2月に飲む酒と、年の瀬が迫った11月の終わりや12月に飲む酒では、何かが違う。大仕事の前に飲むビールよりも、一仕事終えた後のビールが格別なことに似ている。「ようやく1年を乗り切ってきた」という感慨が加わるのかもしれない。
最近は日本酒の旨さを噛みしめている。ワインも美味しいが、骨身に染みるのは、やはり日本酒である。旅先でその土地の珍味とともに日本酒をちびちびやりながら、この1年を振り返るというのもいい。年の終わりに北の宿で、雪が降り積もるさまを横目で見ながら、日本酒を沁み込ませる旅が理想である。
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さて、12月1日はさまざまな分野で今年活躍した人が表彰される賞が発表される日であるが、本紙も1面で「日本ツーリズム・オブ・ザ・イヤー2023」を発表した。
これは本紙の記者や地域担当のスタッフが日々の取材活動などを通じて見聞きした今年の観光業界の取り組みの中から、創意工夫の見られるものを独自に選び、表彰するものだ。
2023年のグランプリには、「古窯グループ」(山形県上山市)が受賞。優秀賞には「鹿児島県旅行業協同組合」(鹿児島県鹿児島市)と、リッツMC(東京都港区)が選ばれた。そして、特別賞には、「屋形船 晴海屋」(東京都江東区)が選出された。
グランプリに輝いた「古窯グループ」は旅館業をはじめ、レストラン業やプリン専門店、フルーツアイスクリーム専門店の出店、さらにはグランピング施設や、男女で一緒に楽しめるサウナガーデンの運営など、積極的に事業の多角化を推進し、地域を盛り上げようとしている。人手不足が大きな課題となるなか、働き方改革などへの取り組みに加え、「旅館業」の枠を超えた企業として採用活動を展開している。新卒採用の実績も好調という。
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優秀賞の「鹿児島県旅行業協同組合」は、ユニバーサルツーリズムの推進に向けてセミナーを実施し、障害者を支援できる地域の観光人材を育成することで、鹿児島の観光客の増加にも貢献している。
同じく優秀賞の「リッツMC」は、バス運転手を目指す人向けの「バス営業所見学ツアー」を実施するなど、慢性的なバス運転手不足の解消に向け熱心に取り組み、大きな実績を上げている。
特別賞の「屋形船 晴海屋」は、コロナ禍だった22年11月から屋形船1艘の内装をリニューアルし、「ラグジュアリーな舟遊び」という、新たな屋形船体験の提供を始めた。
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いずれの取り組みも、アフターコロナを見据え、いち早く新しい需要の開拓や課題の解決に向けた動きなど、時代の変化に対応する新たな試みや挑戦が目立った。敬意を表したい。
表彰式は、旅行新聞新社が来年1月12日に、京王プラザホテル(東京・新宿)で開催する「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」などの表彰式で実施する。本紙は受賞した企業や団体の取り組みを順次紹介する予定だ。
(編集長・増田 剛)