「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(155)お客様の質問への応え方 深掘りし的確なオススメを
2023年12月10日(日) 配信
観光客から、オススメの土産を聞かれることも多いと思います。そのとき、どのように応えていますか。地域の名物商品を、一番におススメすることが多いのではないでしょうか。私自身も、初めて訪ねた場所では旅館や土産店のスタッフに尋ねることがあります。
その場所には多くの酒蔵があり、日本酒の美味しい地域としても有名です。店のスタッフは笑顔で、一所懸命に日本酒について語ってくれました。ただ、「私は酒が飲めないし、家族のために何か良いものがないだろうか」と考えていたので、笑顔で説明を聞きながらも残念な思いを持っていました。
同様に、「地元で美味しいお店を教えてください」。あるいは、「観光地で良い場所はないですか」と尋ねることもあります。そのときに「そこは前回行った店だ」「昨夜食べたものと被るなあ」と思いながら、スタッフの話を聞くことがよくあります。
来春の新幹線開業に向けて、福井県の福井市が2016年度から取り組んでいる「観光おもてなしマイスター制度」の第6回認定試験が、先日開催されました。これまで48人が認定を受け、今回も11人が研修に参加して受験しました。
研修参加者には、「多くの人はシャイな面を持っています。私たちから積極的に笑顔で声を掛けてあげましょう」と伝えました。そして、「質問者には、知識としての情報を答えるのではなく、どの情報が最もお客様に喜んでもらえるものなのかを、選択しなければなりません」と話しました。
そこで必要となる大切な行動が、先ずはお客様が声に出された質問に不足している情報を引き出すことです。「一番喜んでいただけるところをおススメしたいので、少し質問をさせてもらっていいですか」と、答える前に聞くことから始めることが重要なのです。
「そういうことであれば、ここだ」というものが、「見つかるまで、質問を重ねましょう」と伝えています。質問される人にとっては、わずらわしい面もあるかもしれませんが、結果的に「この人に尋ねて正解だった」と思ってもらえるようになるのです。
さらに、お客様からの質問に的確に応えるため、さまざまなことを幅広く調べたりする人も多いと思います。しかし、詳しく知りたいと思い尋ねてみると、「行ったことがないので」という人も、意外と少なくありません。
他の人から聞いた話やパンフレット、ネットで調べた情報ではなく、自ら体験をして自分自身の言葉で伝えることが、最もお客様に喜ばれる伝え方になるのです。
福井市では、こうしたお客様に喜ばれるための質問ができる人たちがマイスターとして誕生しているのです。
コラムニスト紹介
西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。