津田令子の「味のある街」「うな重」――名取亭(千葉県成田市)
2023年12月9日(土) 配信
先日、NHK文化センター郡山教室主催の現地講座「成田山新勝寺&紅葉の成田山公園&名取亭でいただくうな重」と題して街歩きの企画をしたところ多くの皆様にご参加いただいた。
京成成田駅から新勝寺の参道を15分ほど歩き、新勝寺の総門から入り新勝寺大本堂をさらに進んだところに高さ58㍍の「平和の大塔」が建っている。その眼下には成田山公園が広がっている。16万5000平方㍍(東京ドーム3個半分)という広大な敷地をもつ緑豊かな庭園だ。園内には文殊、竜樹、竜智と呼ばれる3つの池が配され、季節の移ろいを感じ取ることができる。2~3月にかけては約460本の紅梅や白梅が見ごろを迎え、開花時期に合わせて梅まつりも開催され梅の香りが訪れる人々を愉しませてくれる。光明堂の近くの階段を下りると現れる「雄飛の滝」でパワーをいただき、いざ名取亭へ。
龍智池の畔にあるのが、うなぎで評判の名取亭だ。成田市でうなぎが有名になったのは、その昔、印旛沼で捕れる栄養満点のうなぎを成田山の参拝者に向けて多くの旅館や料亭が振る舞ったことがきっかけになったという。
1920(大正9)年創業、2020年に100周年を迎えたという老舗だ。創業時からこの場所で、お店の建屋もほぼそのままに営業されていて、その佇まいや看板、のぼりにも風情を感じる。著名人からも愛され、とくに歌舞伎界の方々に常連客も多いという。
ふわりと薫る至福のうな重、白焼きや蒲焼き、肝吸いに肝焼きなど、どれもこれも絶品と評判だ。今回は予め肝吸い付きのうな重を注文しておいた。お椀の蓋を開けるやいなや香り立つ肝吸い、蓮の茎を酢漬けにしたモノ、名物のきゅうりのお漬け物、いよいような重の登場だ。
箸を入れればふわりとうなぎの香ばしい薫りが立ち上ぼり、やわらかくふんわりと蒸された身と、かりかりと焼かれた食感が絶妙だ。やや硬めに炊き上げた白米に甘さの利いたタレが、ほどよくかかっている。あまりの美味しさに、思わず「来週も、食べに来よう」と思ったほどだ。
(トラベルキャスター)
津田 令子 氏
社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。