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不安定化の中で観光は―― ― 世界の動きと連動して刻一刻と変化

2015年7月11日
編集部

 JTBが発表した今年の夏休み(7月15日―8月31日)の旅行動向によると、国内旅行は前年同期比0・2%増の7561万人、海外旅行は同1・9%減の255万人。総旅行人数は同0・1%増で過去2番目の7816万人と、好調に推移すると予想している。

 また、9月19―23日には5連休(シルバーウイーク)も控えている。期間中の予約状況は、ルックJTBは同80%増、エースJTB(首都圏発)は同188%増と、夏休みが終わった後の予約も絶好調だ。JTBは雇用環境の好転や、夏期ボーナスの増加などが好調の要因と見ており、国内旅行は今年4月から順次全国で販売された「ふるさと旅行券(プレミアム付き旅行券)」が各地で売り切れになるなど、地域への旅行需要喚起に貢献していることも挙げる。

 方面別では、北陸新幹線効果で依然と北陸が好調のほか、16年5月のサミット開催が決まった伊勢志摩への注目も高まっている。旅の目的では「帰省、離れて住む家族と過ごす」「温泉でゆっくりする」などが多いという。一方、円安傾向に加え、国際情勢や感染症への不安から、海外旅行は昨年よりも減少する見通しだ。ハワイや台湾への人気は継続しており、航空路線の拡大でオーストラリアも増加が見込まれている。

 しかし、最近の国際情勢を見ると、さまざまな不安を抱いてしまう。ギリシャのユーロ離脱危機や、急落する中国の株式市場、ロシア・ウクライナ問題、南沙諸島周辺での緊張関係、過激派組織「イスラム国」を巡る動きなど、世界は不安定な状態にあり、強いストレスを感じ合っている。それらすべてがつながっており、何か一つの些細な出来事や、“思い違い”がきっかけで、国際秩序が一気に瓦解してしまう脆弱さを感じる。MARSなど感染症の拡大も人々を無意識のうちにも緊張させている。

 国内を見渡しても、火山活動の活発化により、観光客が著しく減少しているエリアが点在している。また、新幹線火災事件など、好調が予想される国内旅行にも水を差すような事件も発生している。不安定化する時代であるが、どの時代であれ、運命的に出会った時代を逞しく生きていくより仕方がない。

 「観光立国」を目指す日本は、これら世界の動きと複合的に連動しながら、刻一刻と状況が変わりゆくことを認識しなくてはならなくなった。また、これまで以上に観光産業の経済的な存在感や、“地域創生への役割”が大きくなってきたことで、国際政治における「駆け引き」にも大きな影響を与えるようになった。リーディング産業としての責任も求められてくる。

 このほど、「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録が決まり、長年準備を続けてきた地元の方々の喜びも伝えられた。一方で、韓国との間で「強制労働」について対立し、後味の悪さも残した。世界中の人々に地元の優れた自然や文化を知ってもらえるチャンスである「世界遺産登録」だが、政治的な問題に発展してしまうことは本意ではない。比較的近代の登録については、そのようなリスクが含まれていることを、地元民や観光関係者も考えていかなければならない。また、登録によって一時的に大きな注目を浴びるが、その後の永続的なビジョンへの視点が、より大事になってくる。

(編集長・増田 剛)

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