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〈旬刊旅行新聞12月11日号コラム〉――台湾美食旅 昔ながらの店構えは意識的なのか?

2023年12月11日
編集部:増田 剛

2023年12月11日(月) 配信

 久しぶりに台湾を旅した。最後に訪れたのは、コロナ禍前だったので約4年ぶりだった。

 

 今回の旅の目的は、美味しいものを食べることで多種多様な飲食店巡りもした。メニュー一覧が載っている縦長の紙の伝票に、「正」の字を書いて注文するスタイルが市中の食堂には未だ残っており、少し懐かしく感じた。「鼎泰豊」も以前は紙に書いて注文していたが、さすがにタッチパネル化していた。タッチパネルで料理やビールを注文すると、日本語の堪能なスタッフがその都度テーブルまで確認しに来るので安心だった。「鼎泰豊」の接客スタイルはべたつかず、親切だ。言葉の壁を感じることもなく、心地よい。

 

 

 アジアの街の進化は著しい。数年訪れないと大きく変貌する。良く言えば現代化だが、悪く言えば均質化・無個性化してしまう。以前に気に入っていた古い店を探したが、跡形もなく、原宿などで見掛けるポップな感じの店に変わっていた。台湾の「台北101」周辺も新宿や渋谷、韓国の主要都市、北京やシンガポールなどと区別がつかないほどで、その意味ではあまり魅力を感じることはなかった。東京でひときわ個性が光る浅草が外国人観光客に人気な理由がわかる。

 

 台北の西門エリアも、日本的、あるいは韓国的な店舗が溢れていたが、半熟卵が乗った魯肉飯が安くて美味しい「天天利美食坊」は相変わらず古い店舗のまま長い行列を作っていた。

 

 古いけど美味しい食堂が、ある日突然、今風の外観や内装に変わった途端に、魅力が色褪せることがある。天天利が昔ながらの店構えで営業しているのは、意識的なのだろうか。

 

 

 料理も時代の移ろいによって嗜好が変わっていく。伝統的なレシピに忠実な料理をお客に提供しても、「古臭さ」を感じることがある。だからこそ、人気店は軸を定め「変わらぬ味」を謳いながらも、微妙に時代に合わせて味に変化を加えている。

 

 一方で店舗を一新すると、客層が変わる。従来の常連客は去るかもしれない。そして、新しい客層が訪れる。そうすると、器を変え、盛り付け方を変え、新しい客の意向に沿った方向へと、無意識のうちに軸がズレていく。おそらく店主も日々の小さな変化に気づかないのかもしれない。しかし、久しぶりに訪れた客は瞬時に以前とは大きく様変わりしたことに気づき、「この店はまったく変わってしまった」と足が遠のくこともあるだろう。

 

 

 12月5日に、東京都港区の国立新美術館で「ミシュランガイド東京2024」の掲載店発表セレモニーが開かれた。

 

 ミシュランの星の評価基準は、すべて「お皿の上」のみが対象である。「調理技術の高さと味付けの完成度」や「料理の独創性」、「コストパフォーマンス」など、幾つかの世界共通の項目で、調査員が厳しく判断する。あらゆる賞がそうであるが、1つの「物差し」である。

 

 日本を代表するシェフはいつも厨房の中にいる。特異な創造性に富んだ職人の顔や姿を見ることが好きなのだろう。私は可能な限り毎年出席するようにしている。

 

 飲食店の入れ替わりは目まぐるしい。旅先で数年ぶりに訪れた裏道の街角に、以前と同じ佇まいで店が存在し、懐かしい味がしたら、涙が出そうになる。だから食を目的とした旅は面白い。

(編集長・増田 剛)

 

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