カプセル新活用で打開、個室オフィスや定住プランも(豪華カプセルホテル「安心お宿」)
2023年12月13日(水) 配信
「カラオケパセラ」など約20業態100店舗を展開するNSグループ(荻野佳奈子社長、東京都新宿区)が運営する「豪華カプセルホテル安心お宿」は、東京都内5店舗・名古屋・京都の全7店舗を展開している。コロナ禍で休業を余儀なくされたが、カプセルの新たな利用方法としてコワーキングスペースや定住プランを打ち出したことで顧客層のビジネス客や学生の需要に応え、全店の営業再開に至った。これまでについて営業推進室の前田実香氏に話を聞いた。
「安心お宿」は現在、「新橋汐留店」「新橋駅前店」「新宿駅前店」「荻窪店」「秋葉原電気街店」「名古屋栄店」「京都四条烏丸店」の全7店舗を展開している。基本的には男性専用のカプセルホテルとして営業しているが、京都店のみ女性の利用にも対応している。館内はオールインクルーシブで、アメニティや館内着、人工温泉だけでなく、ごはん、アルコールなど、すべて込みのカプセルホテル施設として人気を博している。
しかし、コロナ禍を迎えてカプセルホテルの宿泊需要は大きく低下し、「安心お宿」も主要な顧客層であるビジネス客や学生の利用が激減する状況となった。全7店舗が相次いで休業・業態転換せざるを得ない状況に陥ったが、営業維持に向けた措置を実施。需要が少なくなったカプセルの新たな利用方法として、カプセル型のコワーキングスペース「パセラのコワーク」や定住プラン「カプ住」を打ち出した。
「パセラのコワーク」とは、テレワーク勤務に快適な仕事場を提供するコワーキングスペース。「安心お宿」の1フロアをすべてコワーキングスペースとして改装し、カプセルの上下段の仕切りをなくした1人用の個室ブースと、パソコン関連機器の貸し出しやドリンクバーなどの無料サービスによる付加価値で差別化をはかった。
前田氏は「コロナで在宅勤務が増えていた背景を踏まえ、自宅では集中できないお客様のニーズに応えることを可能にしました。在宅勤務が多かった時期には、各カプセルフロアが満室になるくらい利用され、とくに駅近くの新宿駅前店はビジネス客の利用が多かった」と当時を振り返る。
2021年1月~22年末までは、「安心お宿」の一部をパセラのコワークとして運営。現在はコワーキングスペース専用の東新宿、東神田の2店舗を、パセラのコワークとして運営している。
一方のカプセル型定住プラン「カプ住」は、15日間・30日間の2種類を用意した大浴場とフリーラウンジがいつでも使える水道光熱費込みの定住プラン。連泊利用プランよりもお得な価格設定だったこともあり、SNS(交流サイト)を中心に反響が大きく、多くの人が利用された。現在、カプ住プランは「新橋汐留店」「荻窪店」「名古屋栄店」の3店舗限定で提供する。
こうして徐々に通常営業できる店舗を増やしながら迎えた21年12月、ようやく最後の休業店舗の営業を再開し、全7店舗の営業維持が完遂した。
そして、新型コロナ感染症の5類移行後は「ビジネス客の出張利用が復活したほか、訪日外国人旅行(インバウンド)客の利用が増えました。これにより、単価を抑えた連泊利用よりも通常の宿泊予約を増やしていく方向性に戻せるようになりました」(前田氏)。
新しい試みはこれからも積極的に挑戦する。
「新橋汐留店」は12月28日(木)~24年1月7日(日)までの期間限定で、女性限定ホテルとして営業する。前田氏は「兼ねてから、東京都内を中心に女性客から『東京都内の安心お宿に泊まってみたい』という声を多数頂戴していました。要望に応えるべく、期間限定で女性専用の施設として営業いたします。期間中は従業員も全員女性を配置し、女性目線で選んだアメニティなどの無料サービスを多数用意する」と準備に余念がないようす。続けて、「JR新橋駅烏森口より徒歩240秒と好立地なため、年末年始に開催される大型イベントの会場までアクセス抜群です。ぜひサービスを体験してほしい」と話した。
今後について、「さらにサービスに磨きをかけて、これまでカプセルホテルを利用していなかった層の獲得を目指していきます。カプセルホテルのイメージを変えていき、無料サービスやホスピタリティというところでビジネスホテルとシティホテルに勝負していきたい」(前田氏)と力を込めた。