「提言!これからの日本観光」 〝ライトレール〟
2023年12月23日(土) 配信
直訳すれば「軽快鉄道」ということになるだろうが、要するに〝近代的〟路面電車のことを意味する新語である。
かつて日本の大中都市には、ほとんど何等かのカタチで〝路面電車〟が運行し、「市電」などとも呼ばれる住民の身近な足として親しまれていた。
しかし、路面の軌道上を多くの自動車が走るなど電車の走行環境が厳しくなり、定時運行の確保が難しくなってきたため、乗客離れを招き、次第に大都市の路面電車は廃止されていった。
今では走行条件のよい道路の場合を除き路面電車の走る街は極めて少なくなった。有名な都電荒川線は都電とはいうものの、元私鉄だったため、ほとんどが専用軌道だったので、今も含め乗客の利用があって盛況である。
一方、外国とくに欧州諸国では、路面電車が今も残る街が多い。それは多くの場合、路面電車と歩行者のためとして「車」の乗り入れが制限されている道が多いためである。路面電車が廃止されていったのは、路面電車の軌道上を多くの自動車が走り電車が交通渋滞に巻き込まれて定時運行ができなくなったからにほかならない。
日本の多くの都市がそうであったように軌道敷内の自動車通行を認めたことがその原因の1つであった。路面電車と歩行者(自転車)の道路としている都市や、道路の幅が広く自動車が軌道上を走る必要のない都市では今も路面電車が健在なのはこのことを物語る。
日本で長く路面電車を維持してきた例として長崎市と広島市が挙げられるが、長崎は前者の広島は後者の例といえよう。両市では今も路面電車が市民の重要な足であり続けている。しかも、路面電車の存続している都市が少なくなったその都市にとって路面電車は街の大きい観光資源とさえなっていることは、感慨深い。
路面電車が多く残る欧州諸国では、道路が狭いこともあって電車軌道には自動車の乗り入れを認めない街さえ存在する。路面電車は、道路から極端な場合家の玄関先から気軽に乗車できる市民に身近な足として、その役割を果たしていることも多い。
また自動車に比べはるかに収容人数も多く、今なお都市の確実かつ重要な交通手段である。路面電車をこれからも市民の足として守っていくためには、道路条件にもよるが電車道は電車と歩行者(自転車)道路とし、自動車との分離交通をはかるべきではないだろうか。
欧州の大都市で今も路面電車が大きい役割を果たしているのは、このような交通調整(道路との役割分担)に成功したからではないかと考えられる。排気ガスのないクリーンでエネルギー効率の高い路面電車の見直しが求められるようになった。そのためには、道路の効率的な利用方法の確立も前提となる。
日本商工会議所 観光専門委員会 委員