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「観光革命」地球規模の構造的変化(266)  観光立国と観光亡国

2024年1月6日(土) 配信

 2024年は1月に台湾総統選挙、3月にロシア大統領選挙、4月に韓国総選挙、11月に米国大統領選挙があり、選挙結果次第で波乱が生じる可能性がある。またロシアによるウクライナ侵攻、ガザでのジェノサイド(集団殺戮)、中国の習近平独裁政権の行方などが懸念されており、今年は「大波乱の年」になると予想されている。

 世界の大波乱に先駆けて、日本では昨年末に政治資金パーティー裏金疑惑で安倍派所属の多数の閣僚が更迭され、波乱が生じている。今後、東京地検特捜部による捜査の進展次第で岸田政権の崩壊が危惧されている。

 岸田首相は昨年11月に閣議決定した「デフレ完全脱却のための総合経済対策」で、円安を生かした地域の「稼ぐ力」の回復・強化、地方活性化につながる観光施策の重要性を強調し、2030年の訪日外国人旅行者数6千万人、訪日外国人旅行消費額15兆円の目標達成を表明した。要するに安倍政権・菅政権による「インバウンド観光立国」政策の継続を表明したものだ。

 そういう意味では北海道のニセコ・エリア(倶知安町とニセコ町)は世界に誇り得るパウダースノーのお蔭で、アジアの優良企業による開発投資の対象になり、外資系最高級ブランドホテルが次々に開業している。

 良質で最上級のホテルコンドミニアムは国内外の富裕層にとって投資対象になっており、投資が投資を呼ぶ好循環が生み出されつつある。まさにニセコ・エリアは「インバウンド観光立国の優等生」である。

 とはいえ地元住民にとっては地価高騰・物価上昇、外国人急増による軋轢などがあり、開発と環境保全のバランス保持、不動産売買の適正な規制、地域の将来ビジョン策定など解決すべき課題が山積している。

 このエリアでは既に観光業を中心に人材獲得競争が激化しており、賃金高騰のあおりを受け、倶知安町の介護事業者が人材確保に苦労している。リゾート地区ではパート時給が高騰し、重労働のわりに低賃金の介護職が敬遠されている。訪問介護事務所が求人難で閉鎖する事態が生じており、地域にとって大きな痛手だ。

 国際リゾート地の隆盛化は「観光立国」に貢献しているが、地域にとっては「観光亡国」という面がある。いかに地域との共存共栄をはかるか、が重要な緊急の課題である。

石森秀三氏

北海道博物館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。

 

 

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