【特集No.649】2024年新春インタビュー 内藤耕氏に聞く 「旅館経営の維持」へ生産性向上を
2024年1月1日(月) 配信
コロナ禍の行動制限や、全国旅行支援キャンペーンなど需要が激変するなか、人手不足など宿泊業界の課題は山積している。長期的な視点でみると、客数が減少し、団体から個人化していく流れは変わっていない。またインバウンドの拡大により客室清掃の負担が大きくなるなか、旅館経営維持に向けても生産性向上は不可欠となっている。サービス産業革新推進機構代表理事、工学博士の内藤耕氏に2024年を迎えるにあたり、ロングインタビューを行った。
【本紙編集長・増田 剛】
□食事会場「分散」か「集約」か 10年後の命運分ける判断に
――コロナ禍後の宿泊業界の動きをどのように見ていますか。
旅館業界は、全国旅行支援キャンペーンなどによる追い風もあり、「値下げ競争から脱却しなければならない」という機運が高まり、“単価アップ”を熱く議論していました。
しかしながら、CP終了後から状況は再び厳しくなり、値下げ競争に転じる動きも出てきました。
宿泊業界を長期的に見ると、コロナ禍前後でも総体的に少子高齢化による客数の減少傾向にあり、また団体から個人化への流れも大きく変わっていません。世の中が激動しているなかで、その時々の状況の延長線上に将来を見てしまうと、小さな浮き沈みに対して一喜一憂して、結果として打つ手を間違えるという状況を繰り返してしまいます。「長期的な流れの中で改革をどうすべきか」と、現実的に見ていくことが重要です。
今の大型旅館には2つの大きな流れがあるように見えます。1つは団体に期待をかけて宴会場を残そうとしている宿と、もう一つは、それとは別の新たな流れです。
旅館業界では、一般に「団体」と一括りにしがちですが、もう少し細かく見ていく必要があるといつも感じています。
「企業の会議+宴会」という形態もあれば、個人客の集合体であるツアー、老人会や大家族といった各種小グループなどを含めて、団体と捉えていますが、実はその中身はとても多様で、サービスの提供方法も異なるのです。生産性の観点からすれば、「宴会場で一斉に食事をするか」というところが大きなポイントだと感じています。
――個人客の増加と大宴会場の存在について。
最近になって、宴会場での食事が減って、とくに個人客が多数を占める日に「食事処が足りない」という問題が顕著に見られるようになってきています。
このとき、団体需要に期待をかけた宿では、宴会場を残しながら館内にレストランを作って宴会場を含めて複数の食事処で料理提供している宿もあります。一方、大きなレストランに改修して、団体客を含めて朝食だけでも1カ所に集める宿も出てきています。大きなレストランを作るには、現実的に大きな宴会場を1つ潰さなくてはなりません。この決断ができた宿と、できない宿との間に、今はっきりと明暗を分け始めているように感じます。
細かなニーズに対応するために、食事処をいくつかに分散していくことは良いと思うのですが、……
【全文は、本紙1926号または1月10日(水)以降日経テレコン21でお読みいただけます。】