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下呂温泉・水明館の「カイゼン」 現場から部署間、取引先へ 生まれた時間もてなしに

2024年1月4日
営業部:鈴木 克範

2024年1月4日(木) 配信

瀧康洋社長

 岐阜県・下呂温泉の水明館(瀧康洋社長)は今期(2023年3―11月)、売上に対して本業でどれくらいの利益が出ているのかを示した値・営業利益率が17・6%と、高水準を維持している。顧客ニーズの多様化や各種仕入れの高騰に直面するなか、外的要因の変化にも対応できるよう進めてきた「デジタル化」と「生産性向上」への取り組みが奏功している。さまざまな部署での「カイゼン」を通じ、「無駄をなくすという意識が社内で高まってきた」という瀧社長に現状を聞いた。

【鈴木 克範】

5年で3億円削減

 館内の生産性向上をはかるため、2018年からトヨタ生産方式に基づく「カイゼン」に取り組んでいる。その考えは、作業や業務を「1歩1秒1円」でコスト換算し、「増員・増床・増設なく、増収・増益をはかる」というもの。業務を「見える化」して課題を抽出、無駄や非効率な要素を「カイゼン」するという流れで進めてきた。

 これまで客室清掃や食器洗浄などの業務改善、さらには部署間の情報伝達業務を無くすなど、業務の流れも見直した。1年ごとに「飲料のロット管理による在庫削減」などのカイゼンテーマを掲げて取り組むなか、「5年間(2019―23年)で約3億円を削減した」(表参照)。

「カイゼン」各所で

 客室清掃におけるカイゼン例では、1人で部屋を担当する「セル作業」に切り替えた。取り組み前は、清掃員と客室セット係が別々にいて、清掃作業自体も分担していた。改めて業務を見直すと、非効率だけでなく、すべての清掃指示をリーダーが行う必要があるなどの問題が浮かび上がった。これを解消するため、部屋を1人で清掃する方法に変更。さまざまな清掃道具を携え部屋間を移動できるよう、1人に1台、専用台車も用意した。結果、作業の停滞がなくなり時短が実現したほか、自工程完結型の業務になるため清掃への責任感が生まれ、品質も向上した。

 食器洗浄の場面では、食後の器を「手洗いが必要なもの」「ラック洗浄する小さな器」「そのまま食洗器に入れるもの」の3種に分別したうえで下膳し、洗うようにした。バラバラの状態で下げていたときは平均4時間15分かかっていた洗浄時間が、3時間45分まで短縮した。夕食後の作業は深夜帯に及ぶので、削減効果は大きい。

伝えるを「ゼロ」に

 業務単体だけでなく、部署をまたぐ「業務フロー」の見直しも行った。その1つがホワイトボードの廃止だ。従来、料理の数量や内容、追加変更などの情報は、各パントリーに設置しているホワイトボードに転記。その情報を各部署が共有していた。

 手書き・伝聞による伝達ミスや、書き込むための移動時間を無くすため、情報を集約する基幹システムを採り入れるとともに、ホワイトボードの代わりに大型モニターを導入した。変更情報がリアルタイムでモニターに表示されることで、現場は情報伝達業務から解放され、本業に専念できるようになった。

仕入先との連携も

 仕入れ先との関係でも「カイゼン」に取り組んでいる。バスタオルクリーニングの発注ロットを1500枚、2千枚、2500枚の3パターンに簡素化したほか、バスタオルや浴衣、シーツなどの在庫・発注管理表をクラウド上でリネン会社と共有。宿泊人数と在庫数で発注数が決まることから、宿とリネン会社がともに業務の効率化をはかりつつ、適正在庫を維持できるようになった。

品質ともてなし両立

 部署内での見直しから始まり部署間へ。さらには他社との関係においても「カイゼン」を進めてきた。ただ、新しいスタイルが確立しても、派遣スタッフの入れ替わりなどで、「業務がくずれる」ことがままある。作業中の動画を撮影し、内容確認や教育を行うなど、「工程の標準化は常に必要」だ。

 取り組みへの理解を深めるため社内では、岐阜協立大学大学院が専門知識を学ぶ社会人向けに開講する履修証明プログラム「トヨタ生産方式とカイゼンリーダー養成プログラム」の受講を推奨している。現在26人が修了し、カイゼンリーダーとして活躍中だ。

 デジタル化を通じて無駄や非効率を「カイゼン」することは、ややもすると「もてなし」も無味乾燥なものにしかねない。品質を維持しつつ、「カイゼンで生まれた時間を、もてなしに生かすことが重要だ」。

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