視察見学・体験ツアー集積 「もばら型オープンファクトリー」構築へ(茂原市)
2023年12月28日(木) 配信
千葉県茂原市は11月17日(金)、モニターツアーを行った。
アジアを中心とした視察見学・体験ツアーを集積した「もばら型オープンファクトリー」の構築を目指す同市。
加えて、2018年から取り組む「ロケツーリズム」の要素を加え、国内外のさまざまな層の誘客も目指している。
国内外の旅行者を茂原に誘致するうえでのコンテンツの見せ方、組み合わせ方などを確認するために実施されたモニターツアーの内容をまとめる。
□“産業観光”で国内外から誘客
生産量、埋蔵量ともに日本の水溶性天然ガス田の中で最大規模を誇る南関東ガス田があり、全国2位のガス産出量を誇る千葉県。
茂原市は、この天然ガスの恵みを活用した電気機械工業や化学工業に端を発し、現在では国内最大級のディスプレイ工場を始めとする先端技術産業の集積地域となっている。
観光庁の各種補助事業を活用し20年から進める「産業観光」をテーマにした観光コンテンツの造成は、こうした地域資源を活用し、国内外の教育旅行や企業視察、個人旅行の誘致を目指す目的で進められてきた。
今年度4回実施するモニターツアーは、コンテンツ造成の過程で天然ガス事業会社の「関東天然瓦斯開発」や、ラジコン機器メーカーの「双葉電子工業」など地元事業者との連携体制を構築できたことから、アジアを中心とした視察見学・体験ツアーを集積した「もばら型オープンファクトリー」を構築するために実施された。
1回目のモニターツアーで訪れた「関東天然瓦斯開発」は、1931年5月に創業した、日本で最も歴史ある天然ガス事業会社で、水溶性天然ガスが溶け込むかん水を地中から汲み上げ、天然ガスを取り出し、商業施設や一般家庭などに供給している。
南関東ガス田から産出される天然ガスは、メタンが約99%を占め、一酸化炭素や硫黄分などをほとんど含まないクリーンで、熱量が高い極めて効率的なエネルギー。他の化石燃料に比べ燃焼時の二酸化炭素排出量が少ないため、地球温暖化防止につながると期待されているという。
また同社グループ会社のK&Oヨウ素では、汲み上げられたかん水に溶け込むヨウ素を分離させ、海外に輸出している。ヨウ素は医薬品やレントゲンの造影剤、スマートフォンやパソコンの液晶用偏光フィルムなどに使用されていて、日本は世界2位の生産量を誇っている。
「ロケ地巡りを目的に訪れる人に地域を知ってもらいたい、好きになってもらいたいということは、どこの自治体も思うこと。ロケ地巡りを入口に、地域資源をPRするうえでのヒントが得られた」「天然ガスは、千葉県ならではの観光資源になる」(参加者)。
このほかモニターツアーでは、HMC東京の2階建てオープンバスを活用した「ロケ地巡り」やジビエ御膳(日本料理 竹りん)の昼食も楽しめる。
1回目のロケ地ツアーはあいにくの雨でオープンバスが運行できず予定を変更。映画「今はちょっと、ついてないだけ」のロケ地「旧本納公民館新治分館」の内部をツアー形式で特別に見学し、参加者は、撮影時のようすを聞きながら細かいところまで作りこまれたセットを隅々まで堪能するとともに、映画に登場した丸山珈琲のブレンドコーヒーを飲みながら作品の世界観に浸った。
同館は、映画のメイン舞台となる「シェアハウス」の設定でロケが行われた場所で、撮影に合わせ中を改装した。室内の机やいす、食器などは市民から寄付してもらったもので、実際の撮影でも使われた。
見学後バス車内では、「撮影から3年経っても残せていることがすごい」「(食器などを)市民から寄付してもらって集めたという部分が参考になった。自分の地域でも、ロケセットを残し、可能なら見てもらえるようにしたい」と、各地でロケ誘致に取り組む担当者が見学を終えて感じたことを語った。
なお今回のモニターツアーは、観光庁の「インバウンドの地方誘客や消費拡大に向けた観光コンテンツ造成支援事業」の支援を受け、HMC東京が実施主体となり、ツアー企画と実施は名鉄観光サービスが、茂原市での事業全体の監修、プロデュースは、地域活性プランニングがそれぞれ担った。
地域活性プランニングの古川武男ゼネラルマネージャーは、「これまで茂原市は、観光庁事業を活用し、もともとの地元産業で『ものづくりのまち・MOBARA』としてブランドイメージの構築を目指してきました。昨年度事業者の連携・体制を整え、今年度は広く一般向けにオープンファクトリーというカタチでモニターツアーを実施。世界に誇れるものづくりメーカーや天然ガスなどの資源を生かし、国内外向けに実証実験ができた。『国内でも類を見ない先進事例』と視察を希望する自治体も増えているので、今回の手応えをさらに発展させていきたい」とここまでを振り返った。
□担当者インタビュー
今回のモニターツアーでは「体験」を重視したほか、外国の方にも参加してもらえるよう、通訳や英語表記の案内などの環境整備も行いました。
初回はあいにくの雨だったためオープンバスに乗車いただけず、企画していた体験コンテンツをすべて行うことができなかったのは残念でしたが、参加者からはポジティブな意見を多く聞けて良かったです。とくにロケセットの見学では、バス内で映像を見てもらったことや映画で使われたコーヒーの提供、BGMなどの小道具を使うことで、より映画の世界観を感じてもらえたのではないでしょうか。
また、今回の参加者には本市のロケツーリズムの取り組みは既に認知していただいていましたが、初めてご紹介した市内産業やジビエへの取り組みについても興味をもってもらえたと思います。
今回実施できなかったコンテンツについても、今後の参加者の声を聴かせていただきたいです。
【茂原市役所 経済環境部 商工観光課 課長 渡部 智之】