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JATA国内・訪日旅行推進部長 興津 泰則氏、“料金値上の広報積極的に”

興津泰則氏
興津泰則氏

バス会社とはウィンウィン

 貸切バスの新運賃・料金制度が昨年4月に施行されたが、各所からさまざまな意見が聞こえる(4月21日号特集)。これを受け、国土交通省自動車局は、貸切バス運賃・料金制度ワーキンググループのフォローアップ会合を開いているところ。担当者によると開催期限は設けず、必要に応じて順次開催し、議論を深めて問題に対応していくという。会合にオブザーバーとして参画している、日本旅行業協会(JATA)国内・訪日旅行推進部の興津泰則部長に旅行会社の現状や方向性を聞いた。
【飯塚 小牧】

 今回の制度改正は、安全を担保するために行うということだったので、JATAとしては、そのことを否定するものではない。会員各社に対し、新制度を遵守するように強くお願いをしている。

 ただ、実情としては費用が高騰したこともあって、日帰りバス旅行の値ごろ感のある商品が作れなくなった。1人の運転手が昼間は原則500キロまでしか運行できないなど交替運転手の配置基準の厳格化もあり、もう1人ドライバーをおかなくてはならない方面は非常にコストが上がり、企画が中止になることも多い。貸切バス専業の会社にとっては大変手痛い状況になっている。また、その距離にある観光施設も悲鳴を上げているのが実態だ。長野の一定地域は東京や名古屋、大阪の大都市圏すべてからその距離にあり、国土交通省などに陳情を出されている。長野だけではなく、全国でそういう現象が起こっている。地域にとっては死活問題だ。

 消費者にとっても、急に値段が高くなったという印象だ。バス会社は料金が上がることへの広報活動をもっと積極的に行ってほしい。インバウンドでは、海外から「なぜそんなに高くなったのか」といわれる。安全に関わるコストだと説明し少しずつ理解を得てきたが、国内も同様だ。エンドユーザーと接するのは我われだが、当事者ではないので「旅行会社が勝手に値段を上げた」と誤解を受けやすい。根拠となるものをしっかり広報していただき、我われがお客様に説明しやすいようにしてほしい。これが相互協力の重要なところではないか。

 料金を上げることを批判する気は毛頭なく、経営の安定化や従業員の確保、安全性の向上の3つを捉えたときにはやむを得ない判断だと思う。問題は、需要喚起の議論がまったくなされていないことだ。国交省の検討会では、運賃やバス会社の企業としてのあり方は検討されるが、需要喚起について議論する場ではないので、なおざりにされている。これを横に置いていては、さまざまな問題が生じるのではないか。需要が伸びていかなければ、いくら料金の制度が改正されても、バス会社にとって、企業としてのメリットが継続的に出てくるのか疑問だ。値段が上がりお客様が買わなければ商品を作れなくなるという実態からすれば、我われも縮小せざるを得ない場面が多々出てくる。現に、東京都内ではバスを使わない教育旅行も出てきている。本来の趣旨が「バス事業者は安定的な経営のもとに健全な地域に根差した会社を目指す」ということならば、需要喚起も本格的に取り組まなければまったく意味がない。それを旅行会社やバス事業者、国、地域と官民でしっかり議論していくべきだ。

 また、現状、標準運賃の下限割れ運賃も認められてきており、せっかく変更した制度が形骸化し、昔に戻ってしまうのではないかと懸念している。制度が遵守されているかどうかきちんとチェックをしてほしい。我われが襟を正さなければならない問題もあり、会員会社にはバス会社と問題のないビジネスをするようにと、今年の2月に再度お願いしたところだ。自らしっかり制度を守ることが、お客様への安心・安全の提供につながると考えている。

 以前から強く訴えているが、バス事業者とは過去も現在も将来もウィンウィンで、共に観光業全体を繁栄させていく大きな柱となっていかなくてはいけない産業だ。これからも関係をしっかり持って、お互いに協力していかなければならない。過去に後戻りして業界が乱れることがあってはいけないと思う。

 国交省ではフォローアップ会合が開かれ、問題に対する議論の場が設けられているので、それらの機会を生かし、いい方向に進むように今後も努力していく。

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