24年を完全復活元年に 能登半島地震の復興支援も検討(JATA新春会見)
2024年1月12日(金) 配信
日本旅行業協会(JATA、髙橋広行会長)は1月10日(水)、2024年新春記者会見を開いた。髙橋会長は、「本年を旅行業界の完全復活元年と位置付けて取り組んでいきたい。海外旅行の復活と、旅行業界が目指すツーリズムとして、旅行会社の存在価値を示す」と意気込んだ。元日に発生した令和6年能登半島地震の対応では、義援金の募集や、ボランティアの受け入れ開始時に派遣する準備を進めていると説明した。
JATAは昨年12月から「観光産業共通プラットフォーム」を稼働させている。1月1日(月)に発生した能登半島地震において、地震発生から13分後に震度5以上を観測した地域にある登録施設254軒へ、被害状況確認の発報をした。津波警報が解除された翌日までに、約4割から返信があったという。未回答施設について事務局から連絡し、現在は被害の大きかった輪島市や珠洲市などを除き、現在約9割の宿から回答を得ている。
また、地震発生時に被災地へ行っていたツアー客については、和倉温泉などに滞在していたツアー客は宿の案内で避難所に避難し、個人旅行者は翌日以降、避難所から施設の送迎車や旅行会社が手配し現地に向かったマイクロバス、自家用車などで翌々日までに帰宅した。団体バスツアーで石川県内に訪れていたツアーの旅行者は、能登空港駐車場へ避難し、現地でワゴンなどを調達して県外へ帰宅した。
ツアー客の人的被害はなかったとし、会員企業においても現在も営業を続けていると報告した。
JATAは今後の取り組みとして、復旧や復興の段階が進むにしたがって、義援金やボランティア派遣などの支援を行う予定。また、復興段階に入れば、被害がなかった地域の風評被害対策や、被災地の観光再開時に観光を通じた支援策の展開が必要とした。
さらに、今年9月に東京ビッグサイトで行われるツーリズムEXPOジャパン2024において、復興に資するプログラムなども検討している。
□コンプラ遵守 業界の信頼回復へ
旅行業界の度重なる不祥事などのコンプライアンス問題について、JATAは昨年12月に外部の専門家で構成された有識者委員会を設置した。年度内に具体的な対応策をまとめる方針。
髙橋会長は、「旅行業界全体で意識と行動の変革を進め、信頼回復に全力を注ぐ」とした。
□海旅は節目の年 三位一体で完全復活
髙橋会長は、「23年は5月に新型コロナが5類相当へ引き下げになり、訪日旅行や国内旅行は大きく回復した。この一方で、人手不足やオーバーツーリズムの課題も顕著となっている」と振り返った。
回復が遅れている海外旅行については、コロナ前の6割程度の回復に留まっていると認識。一方で、法人の海外団体旅行需要が活発になっており、社員旅行やインセンティブ旅行を復活させた企業が多いという。髙橋会長は、「海外団体旅行から動き出して、個人にもインパクトを与える流れを創る。こうした刺激が続くことで、年度中にはコロナ前の水準に近付く道筋が見えるのでは」と期待を寄せている。
さらに、日本人の海外旅行自由化60周年を迎えたことや、日米観光交流年、トルコとの外交関係樹立100周年、パリオリンピック・パラリンピックなどの機会があることから、「節目の年である今年に完全復活するよう全力で取り組んでいく。国内・訪日・海外の三位一体でツーリズムの完全復活を目指す」と意気込みを述べた。
□ビジネスモデル変革 旅行会社の存在価値
旅行業界の目指すツーリズムについて、「コロナ禍を経て、サプライヤーの直販化の進行など環境が大きく変化していることから、ビジネスモデルの変革が求められる」と指摘。新たな出会いや体験の提供、個人ではいけない場所、ストーリー性のある旅を提供することで、「旅行会社の存在価値を示さなければならない」と力を込めた。
アドベンチャートラベル(AT)では、世界全体では70兆円規模の市場に成長している一方で、日本では未開拓の分野であるとし、「ATの概念を理解してもらい、ガイドの確保や育成が重要となる」との認識を示した。
業界の課題として、人手不足を挙げた。人手不足対応のため、DXによる生産性向上は不可欠とし、チケットレス化やコンタクトレス化を含めて課題解決へ取り組みを進める必要がある。
また、国内旅行における旅行需要平準化に向け、「平日に泊まろう!キャンペーン(案)」を検討している。平日需要の喚起や、休日の取得促進、オーバーツーリズム解消、混雑緩和などによる旅の満足度アップを目指す。