〈旬刊旅行新聞1月21日号コラム〉――第49回「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」 表彰式に加賀屋 出席者からエールも
2024年1月19日(金) 配信
2024年1月1日に、「令和6年能登半島地震」が発生した。翌2日には支援物資を輸送中の海上保安庁の飛行機と日本航空(JAL)の旅客機が羽田空港で衝突するなど、年初早々、日本の先行きは不安に満ちたものとなった。
能登半島の被災地の状況は日を追うごとに深刻さが増し、1月15日現在、約1万8000人が避難所に身を寄せているという。
地震で犠牲になられた方々に哀悼の意を表し、被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。
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地震発生後から懸命な救助活動が行われ、多くの命が救われた。その後、全国から水や食料、毛布やオムツなどの救援物資が被災地に送られた。義援金などの寄付活動も活発化している。
全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(井上善博会長)、日本旅館協会(大西雅之会長)、全日本ホテル連盟(清水嗣能会長)、日本ホテル協会(定保英弥会長)など宿泊団体は会員などに呼び掛け、2次避難所として2万5000人の受け入れが可能な状況となっている。東日本大震災以降、自然災害が発生した際に、宿が被災者を受け入れる流れができており、今回の能登半島地震でもこれまで培ってきたノウハウが生かされることを願っている。
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1月12日には、旅行新聞新社が主催する第49回「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」などの表彰式が、東京・新宿の京王プラザホテルで開かれた。当日は、後援団体の全国旅行業協会や日本旅行業協会をはじめ、主要な観光団体のトップが勢ぞろいし、受賞者を祝い、被災地域の復興を祈る言葉やエールが贈られた。
表彰式では、第49回「旅館100選」総合1位の加賀屋(石川県・和倉温泉)の長谷川明子女将に表彰状を授与した。長谷川女将の胸には言葉にならないさまざまな感情が込み上げたのか、溢れる涙をぬぐいながら深々とお辞儀をされた。
地震発災時、加賀屋はほぼ満室だったという。宿泊客を高台にある小学校に避難させ、翌日には金沢に無事送り届けた。
また、避難所におにぎりや飲料水、売店のお菓子、そして布団や毛布を運び、被災者のためにできることを全力でやられた。エレベーターが停止していたために、従業員は20階まで階段で駆け上がり、宿泊客の荷物を探して届けるなど、宿泊客からの感謝の言葉を目にするたびに、目頭が熱くなった。
「日本一の宿 加賀屋」という呼び名を耳にすることが多い。加賀屋に宿泊した皆がその理由を実感できないこともあるかもしれない。しかし、今回のような非常時や、何かトラブルに遭遇したときに、宿泊客は加賀屋が持つおもてなしの「底力」を、その身をもって体感するのではないだろうか。
加賀屋グループの「加賀屋」「松乃碧」「あえの風」「虹と海」の4館は当面の間、休館を余儀なくされている。建物がどのくらい損傷しているかの調査にもかなりの時間が必要とのことで、今のところ先の見通しは立たない状況にある。表彰式後の祝賀会で長谷川女将にお声掛けすると、「ずっと迷っていましたが、表彰式に来て良かった」と話してくれた。
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能登半島を中心に、多くの旅館や観光施設が被災した。心が痛む。一刻も早い復興へ、本紙も取材活動を通じて支援していきたい。
(編集長・増田 剛)