人手不足解決へ事例確認 ロイヤルホテル蔭山氏や鶴雅HD大西氏登壇
2024年2月19日(月) 配信
第52回国際ホテル・レストラン・ショー開催期間中の2月13日(火)、東京ビッグサイトで「東京・関西・北海道の宿泊業界トップが語る! 宿泊業における『人的資本経営』とは」をテーマにパネル討論会が行われた。人材不足の解決のために必要なことや、事例などを確認した。
ロイヤルホテル(大阪府大阪市)会長で、日本ホテル協会副会長の蔭山秀一氏と、鶴雅ホールディングス(北海道釧路市)会長で、日本旅館協会会長の大西雅之氏、ホテルオークラ東京(東京都港区)専務の髙栁健二氏が登壇。コーディネーターは日本能率協会経営・人材革新センター長の富浦渉氏が務めた。
冒頭、富浦氏は宿泊業界で人手不足が深刻化するなか、「従業員のスキルとモチベーションを最大限に引き出し、育て、質を高めることでより良いサービスを提供することが経営において最も必要な要素」とした。
モチベーションを上げる取り組みについて問われた蔭山氏は昨年3月に土地と建物をカナダの不動産投資会社に売却したことを説明し、「外資系企業は極めて明快に昇進へ必要な要件が定義されている」と話した。これまで年功序列や勤続年数による曖昧な評価制度だったことを振り返り、「昇格基準を設けることが大きなモチベーションアップにつながる。努力に対するフィードバックで、さらに向上する」と語った。
また、2025大阪・関西万博や2030年にIRが開業することから、多くの外資系ホテルが大阪府にオープンしていることを紹介。「外資系ホテルは(働き続けるうえで)非常に厳しい環境だ」と指摘し、「貴重な経験をした人を採用できるよう、人事制度を見直して人材の流動化に備えたい」と話した。
大西氏は「宿泊業の平均賃金は、全産業の下位であるサービス産業の中でも低いレベルだ」と語り、「希望と誇りを持って働いてもらうために平均給与を超える企業努力を行うことは、社員の生活を預かる経営者としての責務だ」との考えを示した。日本旅館協会の会員の4割ほどが債務超過となったことにも触れ、「一部のホテル・旅館は昇給が非常に難しい。サービス料を復活させて、給与の原資に充てることを宣言したい」と話した。
生産性向上については「労働者が健やかに長期間、働いてくれれば、技量が高まり生産性は高まる。労働環境の改善は、人手不足解消にもつながる」と持論を展開した。
髙栁氏は「泊まり番など労働負荷の高い時間帯に働くスタッフに、これまでの深夜手当に加えて、新たな手当を支給している」と話した。さらに、「産業全体で若年層の賃金が上昇している」として、初任給を上げたことを紹介した。
また「従業員を育てるには、年功序列でキャリア積んでいくことが必要。これがホテルのクオリティの高さとチームワークの良さを生み出している」と話した。
一方、「年功序列を続けるのは難しいだろう。各グループホテルで事情が異なり、苦労している」と語った。