“訪日重視”43%増の142億円、85%がインバウンド関連に(16年度予算概算要求)
観光庁がまとめた2016年度予算の概算要求では、15年度の99億1千万円に対し、43%増の142億600万円を要求した。インバウンド関連が124億7300万円、国内観光関連が13億3400万円、観光産業振興関連が6300万円、その他が3億3700万円。15年度に続きインバウンド政策を推進、2千万人時代への受入体制を整える。福島県の観光関連復興支援事業(復興枠)は3億7400万円を求め、総計で同40%増の145億8千万円を要求した。
【丁田 徹也】
免税制度拡充や国際会議底上げも
16年度は「『2千万人時代』への万全の備えとインバウンド観光による地域活性化」に要求総額の約85%を占める124億7300万円を計上。このうち、ビジット・ジャパン(VJ)関連に115億300万円、新規施策に4億円、今年度認定した「広域観光周遊ルート」を形成するための促進事業費に5億5千万円、通訳ガイド制度の充実・強化に2千万円を充てた。
インバウンド関連の新規施策「『2千万人時代』に備えた受入環境整備緊急対策事業」(4億円)は「攻めの受入環境整備」を目的とし、地方ブロック別連絡会や訪日外国人旅行者の要望から、受入環境整備に係る課題を調査・検証・実証実験を実施する。宿泊施設不足への対応や観光案内所の機能向上など、あらゆる受入環境整備のモデル事例を創出し、全国に普及させ、取り組みを加速化させる。
国内は地域づくりや観光産業振興
国内関連では、国内観光推進のための地域づくりに13億3400万円を要求。新規事業の「テーマ別観光による需要創出事業」に3900万円を計上する。同事業は、特定の観光資源に魅せられて日本各地を訪れる「テーマ別観光」のモデルケースの形成を促進し、新たな旅行需要を創出する。
統計整備による観光地域づくり支援にも5億2500万円を要求する。各地域の観光動向を正確に把握することを目的に、宿泊統計や訪日外国人消費動向などの既存全国統計をベースにモバイルデータなどを用いた補正を行い、都道府県別の観光入込客数や観光消費額を統計的に推計する手法を検討している。
人材育成関連は3千万円
観光産業振興関連の要求では、産学連携による旅館・ホテルの経営人材育成事業に3千万円、ユニバーサルツーリズム促進事業に3300万円を計上した。
国交省は4本柱で観光立国を推進
国土交通省全体の予算概算要求のなかで観光分野は、①観光振興と地域ビジネス・雇用創出による個性ある地域の形成②観光立国の推進③2020年の東京オリンピック・パラリンピックを見据えた観光振興――と大きく位置付けられた。
「観光立国の推進」は(1)「2千万人時代」への受入環境整備(要求額23億円・前年度比84%増)(2)訪日プロモーションの戦略的拡大・強化およびMICEの誘致・開催の促進(115億円・同43%増)(3)地域の観光振興の促進(19億円・同42%増)(4)社会資本整備と一体となった観光振興――の4本柱で推進する。
税制は免税や国際会議
税制改正要望でもインバウンドに特化し、免税制度拡充と国際会議の範囲拡大に焦点を当てた。
免税制度の拡充(消費税・地方消費税)については、免税対象となる一般物品の最低購入金額「1万円超」から「5千円以上」への引き下げを要求した。実施されると「5千円超」を対象とする消耗品と最低購入金額が同額になる。
14年10月から実施されている「一般物品1万円超、消耗品5千円超」の免税制度では、地方で販売されている少額の民芸品・伝統工芸品(一般物品)に対応できないことがあるため、改正の必要性が高まった。
そのほか免税関連では、免税手続きの電子情報化など、利便性向上に向けた要望を提出した。
国際会議関連では、国際会議において日本政府観光局(JNTO)に寄付をした場合の法人税・所得税控除要件の改正を要求。現行では「外国人おおむね50人以上」「参加国数おおむね10カ国以上」「全参加者数おおむね200人以上」「開催経費おおむね2500万円以上」の要件を満たす国際会議への寄付に限られている。現状に対し、寄付金を出しやすい環境を整えるため、国際会議協会(ICCA)統計基準に準拠した改正案「外国人おおむね50人以上」「参加国数おおむね3カ国以上」「全参加者数要件撤廃」「開催経費おおむね500万円以上」を提出した。
日本は国際会議の開催数が多く、アジアでは中国とトップ争いをしている。しかし、国際会議は学会や協会などの非営利組織が主催することが多く、収益性が低いため、開催経費の多くは関係者の寄付に頼らざるを得ないという課題を抱えている。政策上では「2030年までにはアジアナンバーワンの国際会議開催国として不動の地位を築く」と目標設定をしており、国際会議の誘致・開催件数の底上げを行う。