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10回中9回失敗しても… ― 「与えられたプラン」と「穴場探し」

2015年9月11日
編集部

 サービス業では「女性客を店に呼ぶことが成功のカギを握る」とあらゆるところで言われている。レストランや居酒屋などを見ると、なるほど「女性限定プラン」「女子会プラン」などが多く設定されている。なかでも、旅行業界はその最たるものかもしれない。温泉旅館やシティホテルのホームページを覗くと、「女子旅」を想定したスイーツやエステプラン、お洒落な浴衣が選べるサービスなども用意されている。女性に支持される店は概して華やかで、清潔感があり、従業員も爽やかだ。床が汚れたままであったり、壁紙の趣味が悪かったり、無愛想な店員が注文を取りに来るようでは、まったく話にならない。

 旅行業界では女性をターゲットにした企画が圧倒的に多いが、次に多く見かけるのは、「ファミリープラン」である。これは、子供が小さい時に、私も本当によく利用した。ファミリープランの良いところは、食事はバイキングが主流で、“チビッコたち”が好きそうな料理やデザートもたくさん用意されているし、好きなものだけ幾らでも食べられるので子供たちには大人気だ。夏休みの大型旅館などでこのプランが多く組まれ、大浴場も子供たちにとってはうれしい存在だ。

 今は全国どこの温泉街も急速にクリーン化されているので、いかがわしい店などもほとんどなくなり、家族で安心して過ごせる温泉地が増えてきた。いや、今や女性や家族客が安心して過ごせない温泉地を探す方がかなり難しいだろう。

 一昔前の多くの温泉地は大人の男たちが愉しむ場所であった。派手なピンク色のネオンが温泉地を妖しく包み込み、ヌードシアターも活況を呈していた時代もあった。そしてさまざまな遊戯も用意され、文化も生まれた。しかし、今は押し並べて温泉地の歓楽街は寂れ、ストリップ劇場などは廃屋のようになっている。その荒れたさまが、なんとも寂しさを誘うが、寂しさはただの瞬時の郷愁であり、今さら多くの現代人がそのような“昭和的な”歓楽街の要素を本気で求めているわけでもない。今は温泉地も女性に求められなければ生きていけない時代なのだ。しかし、一方で女性限定プランが多いということは、「女性客がまだまだ少ない」ということの裏返しなのだろう。

 そこで考えてみる。仮に「男旅プラン」があれば、それを目当てに行くだろうか? 

 実際に、そのようなプランもチラホラ見かける。でも、少なくとも自分は行かない。そして、多くのオトコたちも靡かないだろう、と思う。

 なぜか。それは、男性の多くは、「家族や恋人とではなく、自分のための旅のプランなんてものは、向こうから与えられるものではない」と感じているからではないだろうか。

 「いい店」や「自分好みの宿」は自分の足で探したい。身銭を切り、10回中9回失敗しても、たった1軒の、隠れ家的な自分好みの店や宿を見つけたい。「男旅プラン」のように、ハナから世の男全体に両手を広げて訴えかける誘い文句は、一切意味がない。基本的に自分だけの「穴場」を探すのが好きなのである。人から誘われた「いい店」であっても、それは自分が開拓した店ではないので、物足りない。究極の理想かもしれないが「見つけられるまで、待つ」店の姿勢に客はそそられるものだ。

(編集長・増田 剛)

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