観光庁、旧家のツアー造成を促す 旅行会社などにガイドツアー
2024年3月25日(月) 配信
旧家などが観光資源として活用されていないなか、付加価値の高い観光資源の活用事例を広く発信しツアー造成につなげようと、観光庁は3月21日(木)、旅行会社とメディアを対象に旧安田楠雄邸庭園(東京都文京区)でガイドツアーを行った。
同庭園を所有する日本ナショナルトラスト(安富正文会長)の根岸悦子事務局長は「維持費は寄付や入館料で賄っている。より多くの人に訪れてもらうことで、次の世代に残していきたい」と話した。
日本ナショナルトラストは文化財を保全し、利活用しながら後世に承継していくことを目的に1968年、前身団体が設立した。現在は白川郷(岐阜県白川村)の合掌造り民家2軒を取得。SLと客車3両も所有し、一部を大井川鉄道で走行させている。
同庭園は、遊園地「豊島園」の創始者である実業家藤田好三郎氏が1920年に建てた。邸宅と庭園で構成される。旧安田財閥の創始者・安田善次郎氏の女婿である安田善四郎氏が23年に買い取った。長男の楠雄氏が37年に相続した。関東大震災や太平洋戦争などの被災を免れ、台所を除いて創建当時のまま残されていることが特徴だという。
当日は、同庭園で実施される薩摩琵琶奏者の川嶋信子さんによる音楽公演からスタート。楽曲「平家物語」や「壇ノ浦の戦い」などを披露した。
川嶋さんは「琵琶を叩いたり、弦を擦る音で当時のようすを表現していることが特徴」と説明した。
建物内の風呂場には、結った髪を洗うための水槽や、金箔や銀箔を細かく粉状にした金銀砂子が用いられた襖、氷で冷やす冷蔵庫などが残されている。
1923年に製造された蓄音機を用いて、毎月第3水、土曜日に当時のレコードを流している。大正時代の音色を当時のまま楽しめるという。
戦時下の42年につくられた防空壕も現存。毎年4、8月に公開している。
また、春にはシダレザクラ、秋には紅葉を観賞することができる。