「不正根絶に向けた旅行業界・JATAの取り組み」 地区委員会を廃止、コンプラ推進室・懲戒委員会の設置へ(日本旅行業協会)
2024年3月27日(水) 配信
日本旅行業協会(JATA、髙橋広行会長)は3月27日(水)、外部有識者による「旅行業界におけるコンプライアンス徹底に係る有識者委員会」から、度重なる不正事案の原因分析や今後の再発防止策について、報告書と提言を受け取った。JATAは同日に会見を開き、取りまとめた「不正根絶に向けた旅行業界・JATAの取り組み」を報告した。
髙橋会長は、「関係の皆様方にはご迷惑ご心配をおかけしたことを深くお詫び申し上げる。この事態を受けて、外部の専門家からなる有識者委員会を設置し、原因分析や再発防止策について検討をいただいた」と説明した。
新型コロナ禍以降の旅行業界では、公務受託事業費の不正請求や、雇用調整助成金の不正受給などの不正事案が続いた。
23年5月には、観光庁から法令遵守の徹底や調査報告を求められていたが、11月には大手旅行会社各社による談合の疑いで公正取引委員会による立ち入り検査を受けるなどの事案も発生し、観光庁の指示を受けて、弁護士などで構成された外部専門家による有識者委員会を設置した。
有識者委員会は、今般の不正事案の主な発生原因として、「旅行業とは異なる受託事業の契約上の特性や注意点に関する認識・知識不足」「利益を過度に指向する風土の存在、コンプライアンス軽視の姿勢」「不正を防止する業務管理体制の不備」「JATA地区委員会のガバナンス不全」の4点を挙げた。
これを受けてJATAは、①内部統制の改革②地域組織の改革③意識の改革──の3つの観点から対応策をまとめた。
内部統制の改革では、社内管理体制の整備と強化や、電子的システムによる業務管理の推進を行い、支店の業務に関して、本社でも把握できるチェックシステムを推進する。
また、コンプライアンス通報相談窓口のほか、コンプライアンス推進室や、除名処分などの懲戒規程を整備したうえで懲戒委員会を新たに設置する。
地域組織の改革では、不正事案の生じることのない社内文化を構築するため、コンプライアンスやガバナンス強化を目的とする支店長向け研修の毎年の受講を必須化する。
さらに、地区委員会を廃止し、各県別組織を改めて設ける場合には、理事会による決議を前提とし、本部からのガバナンス強化をしたうえで設置する。
不正事案の発生は、受託業務の知識不足が原因とされることから、受託事業に関わるマニュアルを作成・活用し、この上で事例研究を含めた専門家による実務的な研修を新設する。また、コンプライアンスに対する意識を向上させるため、経営者や従業員に対し、それぞれに適したコンプライアンス研修の実施や、各社・地域への講師派遣を実施する。
さらに、5年ごとに受講が必須である旅行業務取扱管理者の定期研修に、コンプライアンスに係る科目を取り入れる。
髙橋会長は、「会長である私自身が先頭に立って、これらの対応策を着実に実行し、旅行業界から不正事案を根絶すべく取り組んでいく」と述べた。