津田令子の「味のある街」「黒糖ドーナツ棒」――かどの駄菓子屋フジバンビ(熊本県熊本市)
2024年4月7日(日) 配信
先日、細川家下屋敷の庭園の跡地をそのまま公園にした肥後細川庭園(東京都文京区)を訪ねた。池泉回遊式庭園で目白台台地が神田川に落ち込む斜面地の起伏を生かし、変化に富んだ景観を作り出している。
湧水を利用した流れは「鑓り水(やりみず)」の手法を取り入れて、岩場から芝生への細い流れとなり、その周辺に野草をあしらっている。池はこの庭園の中心に位置し広がりのある景観を作り出し、池をはさんで背後の台地を山に見立てている。
斜面地は深い木立となっていて池に覆いかぶさるようにヤマモミジやハゼノキの一群が、秋には真っ赤に紅葉した姿を水面に映し出し、多くの見物客が訪れる。樹林の中の山道をしばらく登れば、主に細川家のお宝を展示する永青文庫に辿り着くことができる。
今回ご紹介するのは、こちらの庭園で売られていた黒糖ドーナツ棒だ。
かわいいくまモンのパッケージに魅かれて買ったのだが、「安くて美味しい、一度食べたら虜になりますよ」と言われ、試しに買ってみてあまりの美味しさにびっくり。
外はサクッと、中はしっとり。優しい甘さが人気の秘密だ。沖縄の含蜜黒糖と選び抜いた小麦粉を使用した「黒糖ドーナツ棒」は、揚げ菓子とは思えないほど油っぽさが少ない。硬いような柔らかいような絶妙な食感に沖縄の黒糖が染み込み、食べていくうちに優しい甘さが口の中に広がっていく。
1986(昭和61)年の発売以来、年配の方から子供まで世代と年齢を問わず愛され続けてきたこの一品は、「全国菓子大博覧会」をはじめ数々の受賞歴を誇り、郵便局ふるさと小包全国版では人気商品ランキングお菓子部門11期連続販売数量1位を記録したほどだ。
そんな熊本銘菓を生み出した製菓メーカーが、「フジバンビ」(熊本県熊本市)だ。創業75周年を迎えた今でも「黒糖ドーナツ棒は、おいしくて身体に優しい」と評判を呼び、人々から愛され続けている。その理由を、「単純明快、おいしいからだ」と地元の方は、胸を張って言う。
(トラベルキャスター)
津田 令子 氏
社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。