改革と育成で“一流の観光国”へ、田村明比古・観光庁長官が会見
民泊問題は「適切な解決策を」
9月11日付で観光庁長官に就任した田村明比古長官は、15日の定例会見で、観光の現状はインバウンド対応が不十分な部分を指摘し、「真の観光立国の水準まで達していない。一流の観光国に向けて何をすべきか、観光行政としてはこれからが本当の勝負」と語った。
田村長官は、「2000―02年まで観光部旅行振興課長をやらせていただいたが、3つの課で40人ほどの規模で家内制手工業のような感じだった。現在は観光庁ができ、9つの課に約140人の組織にそれなりの予算もつき、数字的にも実績も上がってきている」と述べた。また、9月10日時点で昨年の訪日外客数1342万4千人を突破し、過去最高を記録することが確実になったことを報告する一方で「急激なインバウンド拡大で受入が充分について行っていない課題もある。広い意味での観光インフラの整備、観光産業の改革と育成に加え、データをしっかりと収集、分析し、それに基づいて長い視点での戦略立案に力を入れていきたい」と語った。
16年度予算の概算要求で新規に「2千万人時代に備えた受入環境整備緊急対策事業」が盛り込まれたことに関しては、「宿泊施設が足りない地域もあるが、稼働率をみると、東京近郊などのビジネスホテルの稼働率は高いが、旅館は40%のところもある。外国人が利用しにくい部分もあるのではないか。情報発信を積極的に行うことなどは観光庁がやるべき部分」と語った。
民泊などの規制緩和に対して宿泊業界が反対していることについては、「東京地区の昨年の延べ宿泊者数は5400万人泊で、365日で割ると1日当たり約15万人泊。1泊当たり約1・4人が宿泊するなかで何室必要かといえば、11万室。しかし、東京地区には12万室しかないので現在フル稼働という状況。宿泊施設といっても超高級なホテルからリーズナブルな施設まである。このなかでAirbnb(エアビーアンドビー)のようなカテゴリーが必要なのかということが問われているが、規制の問題も含めて他のカテゴリーとどのようにバランスを取るのかが重要な点。他省庁とも連携して適切な解決策を見つけていきたい」との見解を示した。
アウトバウンドが伸び悩む状況には、「観光は双方向のバランスの取れた交流が重要。LCCの運航拡大を活用することや、日本の航空会社はビジネス客を重視している傾向にあるが、観光客への選択肢を増やすことも必要」と話した。