「観光革命」地球規模の構造的変化(269) 人口減少と災害復興
2024年4月5日(金) 配信
東日本大震災から13年が過ぎたが、その後も各地で大災害が頻発し、今年の元旦には能登半島地震が起きて、数多くの悲劇と甚大な被害が生じている。
実は能登半島地震発生前の昨年12月22日に厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が2050年までの全国の「地域別将来推計人口」を公表した。それによると、50年の日本の総人口は1億468万人になるとのこと。20年の人口は1億2614万人だったので、この30年の間に2146万人もの日本の人口が減るという衝撃的な政府推計だ。
私が在住する北海道に当てはめると、20年の人口は522万人であったが、50年の推計人口は382万人であり、30年間で140万人もの人口減少が生じるという衝撃的内容だ。
民間研究機関の日本創成会議は、14年に「全国の約半数の自治体で、40年には20~39歳の女性が10年比で半分に減る」と試算し、「出産年齢の中心世代が半滅した自治体は人口減少に歯止めがかからない『消滅可能性都市』になる」と指摘して話題になった。
国は地方創生を推進するため14年11月に「まち・ひと・しごと創生法」を公布し、人口減少や東京圏への人口集中を止め、地方を活性化するための諸々の政策を打ち出したが効果が乏しいままに10年近くが過ぎた。
能登地方は加速する過疎化と高齢化に長年悩まされてきた。今回の地震では既に若い世代が流出し、高齢者の多い地域を大地震が直撃し、自然災害と人口減少のダブルパンチを受けたために災害復旧・復興は容易ではない。
政府は1月末に緊急に取り組むべき対策として①生活再建②中小企業者・農林漁業者・観光業者などの生業再建③インフラ復旧――を重視している。大災害で至る所が破壊された現状では暮らしと仕事の足場となる「まち」を仮設住宅や仮設事業所などでつくりながら復興を進めていく必要がある。
専門家は能登半島の人口が将来的に現在の半数程度になると予測しており、厳しい人口減少を前提にした「創造的復興」が必要不可欠になる。旅行業界は災害地域における観光復興の面で最大限に協力連携を行う必要がある。能登で起きていることは、いずれ日本各地で起こり得ることであり、決して「他人事」とみなさずに協力連携をはかるべきである。
北海道博物館長 石森 秀三 氏
1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。