国際観光施設協会エコ・小委員会、「宿の脱炭素化を」 ホテレスセミナーで具体案提示
2024年4月4日(木) 配信
国際観光施設協会(鈴木裕会長)のエコ・小委員会はこのほど、第52回国際ホテル・レストラン・ショーでセミナー「宿泊施設の脱炭素化―旅館の使用エネルギーを適正化して―」を開いた。持続可能な社会の実現に向けて、気候変動を招く温暖化効果ガスの具体的な削減案を提示した。
はじめに委員長の佐々山茂氏(佐々山建築設計会長)が登壇。2016年の世界におけるエネルギー消費量は、1990年比で約2倍に増加したことを紹介。とくに旅館は大量の水と電気、ガスを使用しており、一般家庭の約10倍のCO2を排出していることから、「宿泊業にとって持続可能な社会の実現は重要なテーマ」とした。
エコ小委員会では、2030年の国内CO2排出量を13年比で26%の削減を目標としていることを説明した。
実現のため、宿泊施設では水道光熱費の見える化で、削減意識を社内で広めることや、外気によって館内の温度が大きく変化しないよう窓を二重化することを提案した。
さらに、団体旅行が減り、個人が増加したことで、チェックインや食事の時間が分散化し、大浴場のピークが抑えられているとして、温浴設備の小型化を勧めた。
佐々山氏は「CO2の削減は気候変動の解決にもつながる。誰にでも関わることなので、排出抑制に努めてほしい」と語った。
続いて、副委員長の小川正晃氏(ユニ設備設計技術顧問)が登壇した。70度の源泉で館内の水道水を温め、客室や調理場にお湯を供給している新潟県にある客室数26室の宿泊施設を紹介。「7~9月の重油消費量をなくすことができた」と話した。
また、館内のWi―Fiとメーターをつなぎ、1カ所のモニターに使用量をリアルタイムで表示していることも説明。削減意識が喚起され、17年の電気使用量は前年比11%減少し、化石燃料は同30%減ったという。
小川氏は「CO2削減は継続的に行うことで大きな効果が生まれる。長期間実施し、短い期間で担当者を変えないでほしい」と呼び掛けた。