14年は3300億円の損失、クレジット使用制限で(Visa)
ビザ・ワールドワイド・ジャパンは9月16日、東京都内で報道関係者らを集めてインバウンド消費の現状や拡大に向けた課題などを説明した。このなかで、クレジットカードの使用制限により、2014年度の訪日外国人による売上機会として3300億円を失っていると発表した。
同社クロスボーダーマーケティング&ビジネスの龍武史部長は「“決済インフラ”の課題とVisaの取り組み」と題し、プレゼンテーションを行った。決済インフラの整備については、14年12月26日に内閣官房と金融庁、消費者庁、経済産業省、国土交通省、観光庁がキャッシュレス化に向けた方策を示し、国としても訪日外国人観光客の利便性向上に取り組んでいるところ。現状、海外のガイドブックには「日本ではカードに頼るのは得策ではない」と掲載されるなど、現金決済が依然として主流だと説明されている。
一方、東京と京都、那覇の飲食店750店舗を対象に行った調査で、カード利用が可能なのは65%と約3分の2にのぼることが分かった。ただ、このなかで全加盟店に配布され、カード利用ができることを示す「アクセプタンスマーク」を貼っているのは27%、さらにこのなかで店頭に貼っている店舗は44%となり、全体では8%しかカード利用ができる店舗として認識されていないことも明らかになった。
対して訪日客に行った調査では、83%がカードで支払うか否かに関わらず、「アクセプタンスマークのあるお店を好む」と回答。買物に与える影響でも、買物時にマークを探す頻度は「毎回」が14%、「頻繁」が40%となった。カードが使えない場合、利用金額は慎重になると答えた人は64%にのぼり、マーク表示が買物時の不安を解消し、誘客につながることがうかがえる。また、ビザ加盟店への調査でカードの平均単価は現金の平均単価より38%高いことが判明。龍部長は「高額だからカードを使ったのかもしれず、単にカード利用で単価が高くなるとは言えないが、相関関係としてカード利用者の方が単価は高く、マークがあればカードで高額なものを購入する意欲につながる傾向はある」とし、マーク表示の重要さを強調した。
これらのことから、マーク非表示やガイドブックなどの情報で「カードが使用できないだろう」という思い込みを持たれている場合や、ランチタイム時の利用不可などカード利用時の条件があることで「使用を試みたが使用できなかった」という場合に売上の機会を逸していると分析。「14年の訪日客数1340万人で考えると経済損失は3300億円に相当し、2千万人では6千億円超になると考えている。これは今、環境を整えるだけで取り込める額」と述べ、旅行者1人当たり17%の売上増加が見込まれると試算した。
また、ビザでは地域と提携し、キャンペーンなどを行っており、プレゼンでは北海道の例が示された。今後は京都市とも連携し、取り組みを行う予定。説明会に登壇した京都文化交流コンベンションビューロー国際観光コンベンション部の赤星周平部長によると、京都のインバウンドの課題は買物への満足度が低いことだという。現在実施している施策は、免税店を拡大するための説明会や専用ホームページを設置していること、免税店スタッフ向けの英語トレーニング、多言語コールセンターの開設、免税店情報の発信強化など。今後は、増加する外国人観光客の具体的な買物需要や傾向調査を行っていくことが必要だとし、「多方面の施策を同時に推進し、さまざまな民間企業と連携していきたい」と語った。