特別展「法然と極楽浄土」展 関東浄土宗寺院の宝物の数々が展示 東京国立博物館で6月9日(日)まで
2024年4月20日(土) 配信
鎌倉時代の一大宗派・浄土宗の歴史を通覧する史上初の展覧会が上野公園の東京国立博物館で、2024年6月9日(日)まで開催されている。
今年浄土宗が開宗850年を迎えることを機に、法然(1133~1212)による開宗から徳川将軍家の帰依によって大きく発展を遂げるまでを、全国の浄土宗ゆかりの名宝の数々で紹介する。平安時代末期、繰り返される内乱、災害、疫病の流行などで世は乱れ人々は疲弊していた。この困難な時代に、分け隔てなく万人の救済を目指した法然と門弟たちの、生き方や守り伝えられてきた文化財にも触れることのできる貴重な機会だ。
法然は現代の岡山県久米郡久米南町に生まれた。阿弥陀仏がすべての人々を救うために立てた48の誓いのうち、念仏往来こそが重要であり誰もが極楽往生できることを説いた名僧で浄土宗の開祖だ。浄土宗とは阿弥陀仏を本尊とし「南無阿弥陀仏」を称えることにより、だれもが極楽往生する。その教えは貴族から庶民にいたるまで、多くの人たちに支持され現代まで連綿と受け継がれてきた。総本山は京都・知恩院。
会場のみどころとして、徳川家康が菩提所に定めた芝・増上寺、目黒・祐天寺、鎌倉・光明寺、瓜連(うりづら)・常福寺、将軍家ゆかりの飯沼・弘経寺(ぐぎょうじ)など、関東浄土宗寺院の宝物の数々が展示されている。代表的なものをあげると、法然の教えをまとめた浄土宗の根本宗典、重文「選択本願念仏集」(盧山寺本)は、冒頭部分に法然自筆で記された経典。次いで縦横4メートル、8世紀に蓮糸で織られた伝説の秘仏、国宝「綴織當麻曼荼羅」(奈良・當麻寺蔵、5月6日までの展示)は東京初公開。これは法然の弟子・証空(しょうくう)によって絶大な信仰を集め、多くの写しが作られている。また、国宝・「法然上人絵伝」は法然の生涯を伝える伝記絵の集大成で、極彩色が美しい。
同展は京都国立博物館で24年10月8日(火)~12月1日(日)に、九州国立博物館では25年10月7日(火)~11月30日(日)に開かれる。
【ジャーナリスト・貞廣長昭】