移住希望者に心構えなど、ゲストハウス経営者語る(長野県)
長野県は9月26日、東京都・銀座のアンテナショップ「銀座NAGANO」で、長野県のゲストハウスオーナーによる移住に関する懇談会「信州暮らしの始め方」を開いた。自らIターンで長野県に移住した経験を持つオーナーらが移住を希望する首都圏在住者に心構えを語った。
来場者は長野県への移住希望者や観光事業に関心の高い首都圏在住者のほか、実際に長野県のペンションにインターン研修した跡見学園女子大学の学生も参加した。
参加者はゲストハウスオーナーから移住の素晴らしさ、ゲストハウス運営の難しさなどさまざまな話を聞いたあと、「Iターンで飛び込んで地元の人とうまく付き合えるのか」「都会に戻りたいと思うことはないのか」など、移住に対する疑問や不安を質問した。
ゲストハウスオーナーは「好き放題に地域に提言するとうまくいかない。いきなりこちらから地域に飛び込んでいくことになるので、これまで地域の歴史を作ってきた方からどんな見方をされるのかを考えてアプローチしていく必要がある」「田舎の良さと都会の良さは両極端に位置するものではないので、田舎が嫌になったとしても都会に戻りたいと思うことはない。『都会に疲れたので田舎に行きたい』という相談者に言っていることだが、都会も田舎も関係なく、その場所での生活スタイルが合っているかどうかが問題」と回答した。
実際にインターン研修に行った跡見学園女子大学の学生は「自分の生活が仕事になっていると感じた」「ゲストハウスは色々な人に出会えて得ることが多かった」など感想を語った。
県の担当者は今回の懇談会について「ゲストハウスオーナーを呼ぶことは、自らのIターンの経験をお話ししていただけるだけでなく、ゲストハウスでの『お試し移住』を参加者に提案することもできる良い機会になった」と語った。
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≪キーパーソンに聞く 磯貝 政弘氏≫
――大学として地域移住にどう関わっているのか。
峰の原高原(長野県須坂市)はペンション経営の後継者不足が問題になっている地域。そこで観光による地域活性化の一環として、学生にペンションのお手伝いをしてもらい、その経験を地元の人々や行政にフィードバックする、というかたちで本校は動いている。
――学生にはどのような指導を。
土地の魅力がどう活かされているのか、ペンションという宿泊事業の在り方も含めて率直に感じてほしいとの思いでインターンシップに送った。今後は現地で得た経験や意見をまとめ、提言していく。
我われ大人は経験を積んでしまっており、どうしても先入観で物事を見てしまうが、学生は我われが失ったみずみずしい感性を持っている。その感性が移住に対してどのような意識を持つかが、地域活性のポイントになる。
先生が逐一指導するやり方も良いが、それこそ先入観を植え付けてしまう恐れがある。観光に対する先入観を持ちすぎているのは、日本の観光全体の現状でもあると思う。
だからこそ、私は学生に大半の時間をメモも取らせずに、とにかく感じ取ってもらう。そのなかで記憶に残った部分が何らかの成果となる。それをまとめるのが我われ経験を積んできた大人の仕事だ。
――移住と言うと観光と少し見方が違うのでは。
単純に「日常生活から離れて非日常的体験をする」という意味では、移住と観光の違いは滞在期間が長いか短いかの差だと思う。また、「景観の魅力」や「人の魅力」といった総合的な「土地の魅力」が観光にせよ移住にせよ人を引き寄せる。この魅力を見てくるように、と学生には言っている。
――これまでにないまったく新しいことを地域で行う可能性も出てくると思いますが、地域との折り合いは。
難しいところで、地域のほかにもペンションのオーナーさん一人ひとりの意見もある。ただ、今回の活動が「峰の原」というコミュニティで将来を考えるきっかけになるのではないかと期待している。また、1回限りの「イベント」にするつもりはなく、今後は学年を超え、活動をフィードバックしながら後年につなげたい。