「もてなし上手」~ホスピタリティによる創客~(160)情緒的価値を高めよう 「おっ」という感動を
2024年5月6日(月) 配信
「西川さん、昨年もお越しくださいましたね。ありがとうございます。今回も大阪から来て下さったのですか」。受付で名乗ったときに返ってきた言葉です。先日、福島県郡山市で開催された「ゴ・エ・ミヨ2024」のレセプションパーティに参加しました。「ゴ・エ・ミヨ」とは、日本では既にレッドブックとして知られている「ミシュランガイド」同様に、各地にあるレストランを黄色の表紙で評価するガイドブックを発行する団体です。1972年にフランスで創刊。アジア地域では唯一となる日本版が2017年に発売し、今年で8刊目を迎えました。
今年は47都道府県で532軒が認定されました。そして、東北で認定されたレストランのシェフが集まって開かれるレセプションに、昨年の山形県・鶴岡会場に続いて、親しくしている奥田政行シェフの誘いで参加しました。会場に到着したときの対応が、冒頭に紹介した出来事です。
昨年は奥田シェフのスタッフの研修で鶴岡に行き、翌日に帰阪する予定でしたが、「お泊りになるなら、来ませんか」と誘われ、飛び入りで参加したのです。
顧客管理はその多くがダイレクト営業のために必要とされていますが、今回は1年前の情報を生かして、再会の瞬間に心を掴む対応をされたのです。
最近、初めて行くレストランに予約サイトから予約し、自動返信で予約完了の連絡が来ました。一度の利用で終わるレストランもありますが、再利用する多くのレストランでは、その自動返信とは別に、利用前に電話が入ります。予約へのお礼と当日の要望など、予約サイトで聞けないことなどの確認のためです。この電話は、行く前からワクワク感を高めると共に、聞いた情報から再利用につながる当日の感動を創造しているのです。
そのレストランでも同様のことがありました。非常に気持ちよく時間を過ごせたので、帰るときに次の予約をしました。するとやはり事前連絡が入ったのです。しかし、そのときは電話に出られず、翌日に連絡をしました。その電話で、さらに感動することが起こりました。電話に出たシェフから「西川さん、お電話ありがとうございます」というものだったのです。
この2つの事例に共通するのは、はじめの瞬間にインパクトのある声掛けをしている点です。名前を使って「おっ」という感動を提供し、情緒的価値を高める。人は商品を購入するときに、機能的価値とは別にこの情緒的価値に大きく左右さます。その商品を購入・利用することで幸福感や優越感、ワクワク感を強く感じれば、自身の選択に成功感を感じ、また利用したいという帰属意識が生まれるのです。
コラムニスト紹介
西川丈次(にしかわ・じょうじ)=8年間の旅行会社での勤務後、船井総合研究所に入社。観光ビジネスチームのリーダー・チーフ観光コンサルタントとして活躍。ホスピタリティをテーマとした講演、執筆、ブログ、メルマガは好評で多くのファンを持つ。20年間の観光コンサルタント業で養われた専門性と異業種の成功事例を融合させ、観光業界の新しい在り方とネットワークづくりを追求し、株式会社観光ビジネスコンサルタンツを起業。同社、代表取締役社長。