津田令子の「味のある街」「八咲羽二重」――村中甘泉堂(福井県福井市)
2024年6月9日(日) 配信
1910(明治43)年に、福井県福井市手寄町に村中甘泉堂は創業した。100年を超える歴史ある老舗だ。初代・村中久松氏が和菓子の製造・卸・販売業を営んだのが始まりだ。創業当初から羽二重餅を看板商品に季節感と地域の秀材を生かしたお菓子作りを行ってきた。今では市内に複数出店し、オンラインショップにてお取り寄せすることもできるようになった。2021年にはパティスリーKANSENDOを本店内に移転させ洋菓子も人気を博している。
福井といえば羽二重餅といわれるほど根強い人気だが、店のホームページには「羽二重餅」が考え出された背景には「『名産品の羽二重を彷彿とさせるような土産物を』という福井の人たちの思いがあったようです。聞くところによると、ほぼ同時期に福井の複数の菓子屋さんから同時多発的に販売が始まったそうです」と記されている。
「羽二重餅」は、米・砂糖・水飴で作る菓子で、それだけに材料への心配りがそのまま風味や食感を左右する。この店は「100%福井米」を貫き、県内でも山沿いで水のきれいな、大野市・勝山市・池田町産の米を産地指定で仕入れるようにしているという拘りようだ。
今回ご紹介するのは、この店の人気の一品で、代々伝わる羽二重餅の技法を生かして考案された「八咲羽二重」だ。爽やかな酸っぱさと、ほんのりした苦味が特徴の和歌山産八朔をふんだんに使用したものだ。この和歌山産八朔と白あんを、上品な甘さできめ細やかな舌触りの羽二重餅で包んだもの。とにかく他では味わったことのない高級感に満ち溢れた和菓子で幾つ食べても飽きがこない。消費期限は3日間なので、離福する日に買うことにしている。我が家では、4個入りを3箱買いもとめ3日間続けて1日4個(1人1個)を大切にいただいている。宅配便で送る場合は要冷蔵(10度以下)で、クール便で届けていただける。到着後は、急ぎ冷蔵庫に保管し、早めのお召し上がりをおすすめする。
北陸新幹線が福井(鯖江駅)延伸で、村中甘泉堂の八咲羽二重を食べる機会が増えてきた。
(トラベルキャスター)
津田 令子 氏
社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。