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「0泊2食」プラン ― “昼に旅館で過ごしたい”ニーズへ

2015年11月1日
編集部

 旅館といえば、「旅先で宿泊する施設」と、一般的には捉えられている。夕方に旅館に到着し、客室に入ると浴衣に着替え、温泉に浸かる。夜は豪華な料理を楽しみ、畳の上に敷かれた布団でゆっくりと眠る。翌朝目が覚めるとさわやかな気分で朝食をいただき、9―10時には宿を出る――。これが旅館の一般的なイメージだろうと思う。しかし、今多くの旅館のホームページを見てみると、「日帰りプラン」が用意され、なかには「0泊2食」プランというものも多く見られるようになった。

 旅館に宿泊する場合、2連休が必要だ。職種によっては2連休が取りづらい人も多い。また、2連休があっても、どちらかの休みには大抵“野暮用”が入っているものだ。家族やグループなど複数人で2連休を確保するには、相当なスケジュールの調整が必要になるが、「もう少し気軽に旅館を使いたい」というニーズもあるのだ。

 たまたま1日ぽっかりと休日ができたとき、少し足を延ばして「のんびりと温泉に浸かりたい」と感じることも、ままある。そのときに、近場の温泉地で(1)お昼に食事をする(2)客室でのんびりできる(3)温泉にもゆったりと入れる(4)夕食も食べられる。そして夜には自分の家に帰れる――という「0泊2食」プランはありがたい。通常の「1泊2食」プランと比べ、料金もかなり安く設定されているのも特徴だ。

 例えば、子育てに疲れた若い夫婦は「1日だけ」子供をおじいちゃんやおばあちゃんに預けて、ゆっくりと夫婦で過ごし、夜には子供を迎えに行くことができる。あるいは、介護で疲れたときに、たまには仲間と美味しい食事をしたり、温泉で日ごろの疲れやストレスを解消したいと思う人も、きっと多いのではないだろうか。

 都市部のシティホテルは昼間の時間帯は宴会場でのイベントやセミナー、さまざまな会合、商談の場などで多くの人が集まり、にぎわう。一方、温泉街は平日の昼間は人通りも少なく、旅館のロビーは閑散としている。旅館だって夜に旅行者を宿泊させるだけでなく、昼間の時間帯をもっと有効に使えるはずである。

 とくに大型旅館は立派な大広間や宴会場を有している。平日の昼間に、活発に文化的なセミナーや勉強会を企画されている旅館も多いが、近隣エリアの人が交流する“場”としての活用に、もっと大きな可能性があるように感じる。

 「0泊2食」プランには、単純に従来の旅館料理を提供するだけではなく、さまざま実験的な試みにも挑戦できる。遠方から宿泊されるオーソドックスな1泊2食プランとは別に、イタリア料理、スイーツ食べ放題など、斬新なメニューを提供することも考えられる。今流行りのグランピング(グラマラスなキャンプ)的な利用としても、面白い。

 昼間の時間をどのようにお客さんに過ごしてもらうのかは、固定観念に縛られない方がいいかもしれない。外国人旅行者が爆発的に増えているなか、すでに「夕食無し」の1泊朝食付プランも徐々に定着してきている。もちろん、「1泊2食」という旅館独特のスタイルを堅持しながら、一方で「昼に旅館で過ごしたい」という、新たな開拓の余地のあるニーズに、真摯に向かい合うだけの価値はあると思う。

(編集長・増田 剛)

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