規制や取締り徹底、観光庁に要望書を提出、JATAが民泊問題で
日本旅行業協会(JATA、田川博己会長)は11月11日、民泊の規制緩和に対する考え方について、旅行業法に沿った仕組みの整備や違法民泊取り締まりの徹底を求める要望書を観光庁長官に提出した。
JATAは「特定の地域(特区)」と「外国人限定」を前提とした民泊の取り扱いを行うことについては賛意を表するとし、これに関しては外国人旅行者の安心・安全の確保を最重要視することで旅行の質が担保され、リピーター増につながり、旅行会社としても旅行業法に沿った取り扱いを行うことができるとの考え方を示した。
その一方で、特区外地域での違法民泊を防止する観点から、今後の海外取次斡旋業者の規制や、施設提供者の取り締まりの徹底も訴える。国内・訪日旅行推進部の興津泰則部長は12日の定例会見で「宿泊関係団体と我われは現在の観光産業を作ってきた関係。宿泊関係の皆様の大きな動きへの支援という意味も込めている」と述べた。
以下、現在の特区に対する考え方と現状の民泊に対する対応を求める要望書の内容。
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【要望内容】
1.旅行者の安心・安全を制度として確保することに加えて、旅行業者が旅行業法に則り取り扱いできる仕組みの整備
(1)消防、食品衛生等、安心・安全を担保するルールの構築(2)国家戦略特区施行令及び内閣府・厚生労働省が通知した、「外国人滞在施設経営事業の円滑な実施を図るための留意事項」の周知徹底と遵守(3)消費者保護の観点から、滞在する施設の設置や管理に瑕疵(かし)があることによって外国人旅行者に損害が生じたときは、施設の提供者が賠償を確実に実施するルールの構築。
2.地域住民(近隣住民)の理解を得るためのルール作り
なお、事業用に供する施設を使用させる期間については、特区毎の地域の宿泊施設の状況を考慮して設定していただきますようお願い申し上げます。
一方、特区以外の地域における違法な民泊を防止する観点から、海外取次斡旋業者の規制や、施設の提供者に対する取締りの徹底も大変重要なことであり、併せて要望させていただきます。
以上
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また、興津部長は「宿泊旅行はパッケージ商品として大変大きなウエイトを占める」と述べ、民泊の仕組みが旅行業界に与える影響についても言及した。「制度が無い状態の民泊と競合することを考えると、JATAとしてはしっかりした考え方を示していこうという話が出てきた。特区内の制度が今後の緩和策に最大の影響を与えると予測し、我われはまず、現在認可されている特区内だけでも旅行会社としてきっちり斡旋できるものを求めていく」と述べた。
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「全国拡大は反対」、健全な観光産業の発展を(JATA)
民泊問題について、日本旅行業協会(JATA)の国内・訪日旅行推進部の興津泰則部長は、規制緩和へ「日本独特のビジネスモデルを崩す必要があるのか」と疑問視する。民泊への対応はJATA内で議論している最中(10月29日時点)だというが、根本にあるべきは「健全な観光産業の発展」とし、「特区における対応をしっかりしなければならない。全国に広げることは反対だ」と声をあげた。
旅行会社の立場として、顧客への安全が最も優先されるなかで、民泊は安全が担保されていないことや、ビジネスパートナーであり、法を遵守している地域の旅館・ホテルへの送客を重視したい意向だ。「東京のホテル不足は今だけの話で、そのために全国のビジネスモデルを崩すことはない。一極集中が問題で、地方旅館の稼働率は3割というところもある」と地域分散の必要性を訴えた。
一方で、従来からの農村漁村への民泊や古民家、町家などへの宿泊は「切り離して考えるべき」と強調。「ホームステイの需要はある。これは単なる部屋貸しとは違う」と見解を示し、Airbnb(エアビーアンドビー)など、無人のマンションの1室などを個人が利益目的で貸し出す行為を問題視した。