乳がん術後も温泉へ、 伊豆の旅館で勉強会開く(リボン宿ネット)
乳がん経験者に優しい宿づくりを進める「ピンクリボンのお宿ネットワーク」(事務局・旅行新聞新社)は10月26日、宿泊施設スタッフを対象にした勉強会を、静岡県の伊豆地域で初めて開催した。会場の熱川プリンスホテル(東伊豆町)には5施設から15人が集まり、講師のNPO法人キャンサーネットジャパン認定乳がん体験者コーディネーターの松井亜矢子さんの話に熱心に耳を傾けた。
松井さんは「乳がん患者は12人に1人と増えている。罹患のピークも40代から50代と若く、治療に5年、検査に10年と長く病と向き合うケースが多い」とし、「乳がん患者が抱える、術後だけでなく、数年間『温泉に行けない悩み』は、経済・精神面の悩みと合わせて、3大苦悩のひとつというデータもある」と説明した。
そのうえで、「入浴時の壁となる『裸を見られたくない』『個室露天風呂付き客室は高価で泊まれない』『まわりが気を使うのでは』など、具体的な悩みに応える心配りが各宿にあるとうれしい」と呼び掛けた。
例として、「入浴や着脱時に使うタオルは、透けないよう少し厚手で大判のものが複数あるとうれしい。また、貸し切り風呂は短時間の設定でもよいので利用料を安くし、敷居を低くしていただければ」と提案した。また後遺症や薬などの副作用にも触れ、「脱毛や薄毛に悩む人にはシャワーキャップは透明ではなく有色だと心強い」「治療によっては大量の汗をかくホットフラッシュも起こりやすく、浴衣の備え付けが夜・朝用の2枚あり、客室の毛布も気軽に調整できるとありがたい」と付け加えた。
食事については、「カロリーや添加物・化学肥料にも敏感になっているが、それを気にして残してしまうのはもったいなく、心苦しい。事前リクエストができ、ハーフコースの設定や、有機野菜や玄米を使ったヘルシー料理などが選択できればうれしい」と話し、「健康志向が高まるなか、これらのサービスは乳がん患者に限らず、時代のニーズにも合っているのではないか」と言及した。
またコースの場合、手元に献立表があると「料理の内容(素材)がわかるだけでなく、体調に合わせて食べ進めるなどのペース配分がしやすい」ことも強調した。
自身だけでなく、家族がんの経験者でもある松井さん。「旅先で温泉に浸かり、病の悩みを一瞬でも忘れ、家族や友人と語らった記憶は数年経っても思い出に残るもの」と振り返る。「ひとりでも多くの乳がんサバイバーがもう一度、気兼ねなく温泉に入り、素敵な思い出を作れるよう、そっとサポートしていただけたらありがたい」と思いを伝えた。
同ネットワークは今後も各地で勉強会を開き、次回は12月10日に石川県・和倉温泉の「加賀屋」にて開催を予定する。
問い合わせ=ピンクリボンのお宿ネットワーク事務局 電話:03(3834)2718。