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「観光革命」地球規模の構造的変化(272) カオス(混沌)の深化

2024年7月15日(月) 配信

 6月23日は「沖縄慰霊の日」であった。太平洋戦争末期の沖縄戦で命を落とした日米双方の約20万人を慰霊する日だ。この日は79年前に旧日本軍による組織的戦闘が終了した日で、最後の激戦地となった糸満市摩文仁の平和祈念公園で戦没者追悼式が営まれた。

 私は1945年10月生まれなので戦後派であるが、私自身は母親の胎内で戦争を感じていたので「戦腹中派」と勝手に名乗っている。私は平和希求論者であるが、現在でも世界各地で戦争状態が現出し、数多くの悲劇が繰り返されている。

 6月中旬にイタリアでG7サミット(先進7カ国首脳会議)が開催された。ロシアによるウクライナ侵攻や中東での戦乱が続くなか、国際秩序形成への貢献が期待されたが、G7の指導力の無さを印象付けた。

 G7サミットに続いて、スイスでウクライナ和平を首脳級で話し合う「世界平和サミット」が開催された。100の国・国際機関が参加したが、ロシアは招待されず、中国は欠席したために実効性を欠く会議になった。

 その間にロシアのプーチン大統領は北朝鮮を訪問し、軍事や経済分野で幅広く協力する「包括的戦略パートナーシップ条約」締結調印を行った。日米欧による対露制裁に対抗して、露朝結束の強化をはかっている訳だ。

 日米欧の結束も決して一枚岩ではない。とくにEU(欧州連合:加盟27カ国)は6月上旬の欧州議会選挙で、自国第一主義を掲げて欧州連合に懐疑的な極右や右派が大幅に伸長した。現にフランスのマクロン大統領の与党は極右に大敗し、国民議会(下院)の解散・総選挙を実施する。ドイツでも右派が躍進している。EUにおける最大の争点は、移民・難民問題とウクライナ支援の見直しであった。

 世界的に社会の分断化が拡大し、自国第一主義が勢いを増している。11月5日(火)に予定されている米国大統領選挙で「もしトラ」が現実化するならば、「米国第一主義」が猛威をふるうことになり、世界のカオス(混沌)の度合はより深化する。

 観光産業は基本的に「フラジャイル(脆い、壊れ易い)な産業」であり、戦争や自然災害や疫病や経済不況などの影響を受け易い。観光産業のリーダーは常にさまざまなリスクを事前に察知して危機対応を周到にはかる必要がある。

 

石森秀三氏

北海道博物館長 石森 秀三 氏

1945年生まれ。北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授、北海道博物館長、北洋銀行地域産業支援部顧問。観光文明学、文化人類学専攻。政府の観光立国懇談会委員、アイヌ政策推進会議委員などを歴任。編著書に『観光の二〇世紀』『エコツーリズムを学ぶ人のために』『観光創造学へのチャレンジ』など。

 

 

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