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機能面での不備 ― 利用者のことを考えた製品・サービス

2015年12月11日
編集部

 6年の歳月を費やして、今年11月にオープンした韓国初のドーム球場「高尺スカイドーム」の観客席は、長いところで31席のロングベンチが途切れず続き、さらに前後の座席スペースは膝が密着するほど窮屈なため、真ん中の席の観客がトイレに行くには15人が席を立ち通路に出なければならず、その不便さから「『21世紀最悪のドーム球場』という酷評を国民から受けている」というニュースを見て、うっかりちょっと笑ってしまったのだが、これは笑える話ではなく、自分たちもこのようなことは、気づかずに日常的に行っていることだと思った。

 このニュースを読むと、誰もが「なんで観客のことをしっかり考えないで設計したのか」と批判的なコメントになるだろう。

 でも、これは一つの象徴的な事例であり、ありとあらゆるサービス業や製造業も、程度の差こそあれ、利用者のことをきっちりと考えていないサービスや製品を安易に提供していたり、良かれと思ったことが、利用者にとってはむしろ迷惑であったり、「どうしてこの程度のことが気づかないのだろう?」と首を傾げられることは、残念ながらよくあることなのだ。

 作り付けの設備でいつも気になるのが、旅館の洗面台である。水道の蛇口の位置と、洗面ボウルの位置が上手く計算されてなく、手は問題なく洗えるが、顔を洗おうとすると、中央まで出過ぎた蛇口が邪魔になって洗えない、機能面での不備がある洗面台にしばしば出会う。それも1泊3万円くらいの高級旅館のお洒落な客室にも多いのだ。宿主は一見豪華で綺麗な洗面台にウットリするだろうが、一度その洗面台で手や顔を洗えば、利用者の不便さに気がつくのだと思う。

 海辺の風光明媚な宿に泊まったときのこと。窓からの眺めは最高で、ベランダの手すりに凭れて美しい海に見惚れていた。「そうだ! この素晴らしい海を眺めながらよく冷えたワインでも飲もう」と思いつき、ベランダのソファに座って窓の外を眺めた。すると、手すりの位置がちょうど目の位置となり、広大な海は無残にも上下に分断し、情緒は消え失せ、やむなく手すりを見ながらよく冷えたワインを飲んだ。もう10数センチ、手すりを上か下かにずらして設計されていたなら、「また必ずこの宿に来て、冷えたワインを飲みながら海を眺めるんだ」と思っていただろう。宿主は手すりを設置するときに、ベランダのソファに座って窓の外の海を眺めていないはずだ。

 先日、少し疲れも溜まってきていたので、伊豆半島の湯治場を訪れた。石のお地蔵さんも入っている広い湯船は、高・中・低温の3段階に分かれている。紅葉に染まる初秋の森林を眺めながら、身体が温まれば、低温に移り、ひんやりとした心地いい気分を味わうと、再び中・高温の方に移動した。あちこちの温泉地に行くのだが、多くの温泉は温度が高い。加水しない「泉質至上主義」のこだわりの浴槽は必要だと思うが、温泉情緒をゆっくりと味わいたい入浴客もいる。そうすると、少し加水してでも、2種類、あるいは3種類の温度の浴槽が用意されていると、利用者側の意見としてはありがたい。

 何はともあれ、利用者、我われにとっては読者のことをもっと深く考える2016年にしたい。 

(編集長・増田 剛)

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