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津田令子の「味のある街」「ビーフ黒カレー」――金魚坂(東京都文京区)

2024年8月12日(月) 配信

金魚坂の「ビーフ黒カレー」2200円▽東京都文京区本郷5-2-5▽03(3815)7088。

 先日の街歩き「本郷菊坂・樋口一葉の文学散歩」講座の折に、久しぶりに本郷の名店「金魚坂」を訪ねた。東大の赤門から数分という立地にある。本郷通りや春日通といった多くの車が行き交う大通りから菊坂通りに入り住宅街の路地を入った中にぽつりとある。創業350年の金魚の卸問屋が営む、レトロで不思議な魅力を持つカフェだ。

 何度訪ねても独特の空間が心地よい。以前は、敷地にある池で鯉や金魚を販売し、釣りや金魚すくいも体験できる都会のオアシスだった。池や建物の老朽化もあり、今年3月20日に新たな場所(目と鼻の先)でカフェを再オープンさせた。

 一葉についてふれておこう。菊坂から本郷4丁目の31番と32番の表示のある間の露地を入ると菊坂でも一番低い「菊坂下町」と呼ばれた場所がある。ここに一葉は住んでいた。奥にある井戸(当時はつるべ井戸)は一葉も使ったものといわれ、旧居跡は向かい合うように2つある。1890(明治23)年に住んだのは、路地を入ってポンプの左側の家で1892(明治25)年には、一部屋多いポンプの右側の家に移ったと言われている。

 当時は私塾「萩の舎」に通うかたわら、戸主として着物の仕立てなどで生計を支え処女作「闇桜」などを書きあげた。旧居跡を過ぎてすぐの小道を右へ入ると、炭団坂がある。上りきると坪内逍遥の旧居跡があり、さらに歩くと文京区の歴史がわかる文京ふるさと歴史館がある。すべて歩いても2時間弱の文学散歩ができるのだ。菊坂の出口近くに一葉が通った伊勢屋質店がある。現在は廃業しているが、土蔵はそのまま残り、当時を偲ばせてくれる。

 話を戻そう。この店の看板メニューは「ビーフ黒カレー」。カレーは黄色と思っている私にとって最初は驚いた。じっくり煮込んだ口に入れた途端にとろけてしまいそうな牛肉と焦がし玉ねぎの風味は格別で、ご飯との相性も抜群で、とにかく癖になる。アップルパイなどのデザートも人気だ。ワインなどのアルコール類も充実している。不定期で音楽イベントも開催している。夏はカレーで盛り上がろう。

(トラベルキャスター)

 

津田 令子 氏

 社団法人日本観光協会旅番組室長を経てフリーの旅行ジャーナリストに。全国約3000カ所を旅する経験から、旅の楽しさを伝えるトラベルキャスターとしてテレビ・ラジオなどに出演する。観光大使や市町村などのアドバイザー、カルチャースクールの講師も務める。NPO法人ふるさとオンリーワンのまち理事長。著書多数。

 

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