政策提言の実行年に、中長、短期の施策振り分け、JATA・田川会長
日本旅行業協会(JATA)は1月7日、2016年初の定例会見を開き、田川博己会長が今年の市場動向の見通しやJATA活動の方向性について語った。今年は昨年、観光庁に提出した国内・海外・訪日の三位一体の「JATA政策提言2015」を実行・実践していく年とし、「ツーウェイツーリズムによる交流大国実現」を目指す。また、16年度からの3カ年計画も議論しており「中長期、短期の施策をしっかり分けて考えていきたい」と述べた。
昨年は「激動の年だった」と振り返り、45年ぶりにインとアウトの旅行収支が逆転したことなどを語った。国内旅行は「北陸新幹線の開業で、新幹線の影響は大きいと改めて感じた。シルバーウイークなどもあり、堅調に推移した」と評価する一方、海外旅行は感染症やテロなどで苦戦し、恐らく前年を下回るとした。訪日旅行については「急速に伸び、課題も見えてきた」と語った。
16年の市場動向は、国内は北海道新幹線の開通やさまざまな行事などで引き続き堅調に推移すると予測した。他方、「日本人の国内旅行の動きが新しい段階に入ってきた」とし、より本格的な体験や着地型への意向が高まっていると言及。「提供する側としてしっかり商品のジャンルや中身を精査していく時代になった」と述べた。
海外旅行は「減少傾向は止まらないが、昨年よりも少しは環境がよくなると思う。回復基調は取ることができるのではないか」と述べ、要因としては燃油サーチャージの値下げや、関西国際空港の民営化などによるLCCの増加などを挙げた。
こうした状況を踏まえJATAの活動は、国内旅行は引き続き東北の回復に尽力する。「震災から5年経ち、いよいよツーリズム業界の出番」と意気込んだ。また、日本人の宿泊旅行は減少している現状もあることから、宿泊旅行の拡大に向け、連泊や長期滞在に向けた仕組みづくりに取り組む。「人の流れを作り新たな価値を生み出し、地域経済を活性化することが我われに求められている。ショッピングやヘルスなど後ろに“ツーリズム”をつけると人の流れができる。力を総動員すると色々な分野に関わることができ、それが観光の裾野の広さだ。この流れを日本人、外国人関わらず国内旅行市場のなかで作っていきたい。それが日本のブランド力を上げる要素になる」と語った。
懸案の海外旅行は「復活の年」にするため挑戦していく。「昨年の日中韓やアセアンとの2国間協議の実を取っていきたい」と述べた。テロ後、落ち込んでいるフランスは1月14日から視察を行い、ゴールデンウイーク前に復活の流れを作っていきたい考えだ。
一方、好調な訪日旅行は質の問題が深刻化しており、JATAに旅行者から助けを求める声が寄せられることもあることから、ツアーオペレーター認証制度をしっかりアピールすることや、オペレーターの登録制度の必要性を訴えていく。
このほか、安心安全マネジメントやコンプライアンスへの取り組み、業法、障がい者差別法など経営課題も対応を進めるとした。
また、議論が進む民泊の問題については、「安心安全の制度設計を作ってもらい、我われも自由に取り扱えるようにしてほしい」と管理体制を整えることを求める一方、個人的な意見として「地方で民泊を解禁しても、インバウンド客が増えることはない。今でも地方の旅館などには空きがある。地方創生と結び付けるのはエゴ」と持論を展開した。