東京五輪に忍者を(1面の続き)
昨年10月9日、世界的にも人気が高い「忍者」に関連する団体を一元化する組織として「日本忍者協議会」が設立された。今回、同協議会事務局長で、伊賀上野観光協会東京オフィス忍者コンテンツ開発センター部長の立石邦博氏に、東京オリンピック・パラリンピックを見据えた「忍者コンテンツ」のあり方などを伺った。
【松本 彩】
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――日本忍者協議会について。
日本忍者協議会の発起人としては、5県5市1観光団体だったのですが、現在は愛知県・和歌山市・長野市が新たに加盟しました。主な活動としては、昨年交付金をいただき、3月8日に設立準備会を設立させ、そこから活動をスタートさせました。今では月に1回、各県の担当の方に東京に来ていただき定例会議を行っています。
――今年、伊勢志摩サミットが開催されますが、「忍者サミット」なども計画していますか。
まだ決まってはいませんが、やろうという動きはあります。今年7月に、「忍者展(仮)」が東京・お台場にて開催されますので、それに合わせて忍者フェスティバルなどを東京で行いたいなと思っています。
――今まで、海外に向けて発信してきた忍者コンテンツについて。
具体的に海外に向けてというのは項目としてはないのですが、昨年3月8日に行った、設立準備会などの記者発表を含めて、海外の新聞やネット・ニュースに多数取り上げてもらえたので、そこは海外に向けた情報発信として大きかったのではないかと思っています。記事としては、「忍者を使った観光戦略スタート」などと紹介されていたようです。
――忍者はアジア地域よりも欧米地域に人気が高いのですか。
現在グーグルと組んで取り組みを行っているのですが、グーグルが行った調査によると、「忍者」というキーワード検索は年々増加してきています。国ごとで見ると1位がアメリカで、2位がインドネシアになっています。この両国が圧倒的多数を占め、そのあとにタイや台湾、南米のコロンビアなどが続きます。ですから、忍者は国や地域による偏りがなく、世界的に人気が高いです。
――やはり忍者人気の火付け役はアニメによるものですか。
インドでは、「忍者ハットリくん」が圧倒的な人気を誇っています。アメリカでは「NARUTO」の影響もありますが、それ以前に例えば「キル・ビル」のような忍者を連想させる映画が数多く作られています。本当に国によって忍者の捉え方はさまざまで、アメリカ人が好む忍者はどちらかというと、アクションなど戦う忍者のイメージ。一方で、フランスやスペインでは、歴史のなかで忍者がどのような役割をしていたかなど歴史的な部分に興味を示します。
訪日観光客が増えているなかで、今まで「忍者」の情報が散逸していて、さまざまな自治体が個々で活動しており、連携があまり進んでいませんでした。私たちがこれからの活動として取り組もうとしていることは、しっかりとした連携を築き、海外に向けて、もっと忍者を発信していきたいと思っています。
――国ごとにPR方法も変えていきますか。
変えていくことが重要だと感じています。例えば、伊賀上野観光協会は、タイや台湾で積極的にプロモーション活動を行ったことによって、自身が運営している伊賀流忍者博物館の外国人比率は4年くらい前までは3%だったのに対し、現在は5%以上まで伸びています。きちんとそれぞれの国の事情にあったプロモーションを行っていければ、今すぐにというわけではないですが、忍者というコンテンツで、外国人観光客を呼び込むことは可能だと思います。
――2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた取り組みについて。
東京オリンピックに向けての取り組みは、私たちが協議会を立ち上げた1つの目的でもあります。東京オリンピックの開会式のアトラクションのなかに、忍者を登場させることは、成し遂げなくてはいけない使命だと感じています。それに向けた活動はすでに行っています。それがどこまで叶うかは分かりませんが、その活動によって、さまざまな人たちに忍者を認知してもらうことが重要だと思っています。まだまだ、オリンピックへのハードルは高いですね。
今年で言えば、5月に行われる伊勢志摩サミットに忍者を登場させようとの動きがあり、現在交渉を行っています。今後どのように進むかはまだ分かりませんが、このことが国や県の人たちが、「忍者は外国の人たちにウケる!」と感じてもらえるきっかけになればと思っています。
――男性と女性、どちらに忍者は人気ですか。
これは非常に難しいことなのですが、私が3年ほど前に忍者検定を実施した際には、5千円以上の受験料を支払い、試験を受けに来ている約8割の人は女性でした。とくに30代前半くらいの若い女性が多かったですね。私自身、男性がほとんどだろうと思っていたので、とても驚きました。それと同時に、国内の忍者マーケットには、私が思っているものとは違うマーケットが存在していることに気づけた機会でもありました。
女性の忍者好きが増えた1つの要因にアニメ「忍たま乱太郎」があります。このアニメはとくに若い女性からの支持率が高く、このことからも、女性は漫画やアニメによって忍者に興味を持つ人が多いです。
――今後の取り組みについて。
地域経済の活性化に向け、いろいろと国と連携して各自治体に忍者を活用してもらえるよう提案を進めています。今まで各自治体が、自分たちのできる範囲で活動を行ってきました。
今回協議会を立ち上げたことによって、やりたくてもできなかった広告宣伝などのバックアップをすることで、広域観光連携など今までになかったマーケットを創出することができるのではないかと感じています。私たちの役割は、各自治体が個々でやってきたことをどのようにサポートしていけるかだと思っています。
そのためにはSNSによる情報発信も積極的に行っていきます。現在、日本忍者協議会のホームページは日本語がメインですが、2年後の18年までには、8対2くらいの割合で外国人比率を上げようと考えており、早急に英語対応を行っていく予定で動いています。2年後にはホームページのメインが日本語から、英語に変わっていると思います。
――ありがとうございました。