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観光の責任とは?、被災地観光シンポ開く(東洋大学)

登壇者は(左から)山田氏、赤沼氏、八重樫氏、島川氏
登壇者は(左から)山田氏、赤沼氏、八重樫氏、島川氏

 東洋大学国際地域学部国際観光学科は1月15日、東京海上日動銀座トラベルラウンジ(東京都中央区)で、産官学連携被災地観光シンポジウム「これからの観光2016―座談会」を開いた。同イベントは、経済産業省産学連携サービス経営人材育成事業支援プログラムの一環で、講師には、三陸鉄道営業部課長の赤沼喜典氏、岩手県北バス東京営業所所長の八重樫眞氏、岩手県沿岸広域振興局の山田恵氏の3氏が登壇。コーディネーターは東洋大学国際観光学科准教授の島川崇氏が務めた。

 島川氏は冒頭、サービス産業が日本のGDPの約7割を占めているなか、現状の人材育成はモノづくりなどに偏り、サービス産業の人材育成は取り組めていない現状を指摘。そのうえで、「経済産業省は全国の大学に対して人材育成のカリキュラムや専門の学部・学科の新設など、ムーブメントを起こしていこうと助成事業に取り組んでいる。そこに東洋大学の国際観光学科も応募し見事17大学の中に選ばれた」と述べ、同大学では17年度から国際観光学部に昇格させる計画も報告し、「近視眼的にならず、子や孫の世代までを見据えた観光の産業育成を考えていかなければならない」と語った。さらに、「昨年、東洋大学にUNWTO(国連世界観光機関)の理事を招いたときに一番大事なのは、レスポンシブル・ツーリズム(責任ある観光)だと言われた。では、観光の責任とは何かを考えていったときに、被災地を支援する枠組みも一つのかたちではないか。多くの方々が犠牲になり、それに対して共感、共鳴しながら被災地の復興へ一緒になって支えて行ける枠組みを観光で築けないかと思った」と述べた。

 また、同シンポジウムには、リーダーシップの理論開発などの面でパートナーを組む松下政経塾塾長の佐野尚見氏も出席した。

 座談会では、岩手県職員の山田氏は「岩手県の観光入込客数は震災前の2010年度は延べ2787万1千人回から14年度には2919万7千人回と着実に回復に向かっているものの、沿岸局管内でみると、14年度の観光入込客数は10年度の83・4%と、完全な回復を遂げていない」と述べた。一方、教育旅行客の入込みについては、「震災以降、被災地ガイドを活用した被災地訪問が増加しており、震災前の水準に比べ約1・5倍も上回っている」状況を説明した。

 三陸鉄道の赤沼氏は「震災から5日後に電車を動かした時に家を流された沿線の住民が車両に向って手を大きく振ってくれた」と振り返り、「三陸鉄道は普段は空気のような存在だが、未曾有の震災の非日常のなかに空気の一部が戻って来たのがうれしかったのではないかと思う。その風景を見て車両の中のスタッフはみんな泣いていた。震災からまもなく5年になるが、風化が進まないように足掻いていきたい」と語った。

 岩手県北バスの八重樫氏は「震災後から語り部たちが自らの経験による教訓を伝え続ける“復興ツーリズム”に取り組んでいる。その大きな成果として、忘れられていた三陸を全国の方々に広く知ってもらえた」と強調。今後については「震災経験を伝えるだけでなく、被災者と訪れた人が共に“学び合う旅”へと発展させる空間づくりが必要」と未来を見据えて語った。

【増田 剛】

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