音声ARの普及・浸透を エイベックスグループが「SARF」事業を本格化
2024年10月10日(木) 配信
エイベックスグループで、アライアンス事業やライセンス事業を展開するエイベックス・アライアンス&パートナーズ(丹雅彦社長、東京都港区)は10月8日(火)、同社で記者説明会を開き、音声ARサービス「SARF(サーフ)」について、今年度から本格的な事業化を推進すると発表した。音声ARを新しいコンテンツフォーマットとして、普及・浸透を目指す。
音声ARは、位置情報と音声情報を組み合わせた音による拡張現実(AR)で、新しい体験を演出するソリューション。GPSやビーコンを使い、特定の場所に紐づけた音声コンテンツを専用アプリで配信するもの。アプリを起動した状態で音声スポットへ入るとその場所でしか聴くことができない音声や音楽を楽しむことができ、観光分野との親和性も高い。
同社は2018年に和歌山県・友ヶ島で音声ARの実証実験を開始。21年から音声ARサービス「SARF」の展開を始めた。同年はコロナ禍のAR観光を軸に、福岡県福岡市や愛知県名古屋市、福島県会津若松市など計7都市で採用。23年には管理ツール「SARF Studio」の提供を開始し、音声ARをより簡単に企画・制作し、多言語化して運用できるようにした。これまで全国30以上の自治体や観光協会、DMOらが観光ガイドや謎解き・肝試しなどのイベント、地域防災などさまざまな用途で活用している。
音声ARの利点ついて、同社事業開発グループの渡部宏和ゼネラルプロデューサーは「音声ARはスマホとイヤホンさえあれば誰でも利用できることと、何よりもスマホはアプリを起動しておけばしまっておけるので、歩きスマホにならないことがポイント。また、設置物不要で景観を壊さない」とし、誰でも安全に利用・運用できる高い汎用性を挙げた。
VRと比較されることも多いというが、それに対しては「リアルや視覚のARと比べて現実世界を拡張しやすい。壮大なセットやグラフィック制作がないので、どこでも簡単に低コストで現実を拡張できる」と強調した。音声を特定の位置情報と結びつければよく、時間帯によって異なるコンテンツの配信も可能なため、多層性へ対応できる。例えば会津若松市は今夏、昼は観光案内の「表会津」、夜は街を舞台にした日本最大級の音声肝試し「裏会津」を配信。同じ場所で昼夜別のコンテンツが楽しめる仕組みを作ることで、滞在時間の増加や宿泊促進などをはかった。
また、利用者は音声から想像するので個々に没入感が味わえ、視点を増やせることも特徴だ。世代や興味関心によって、異なる体験をさせたい場合の多視点性を持たせることができ、音声ドラマのエンディングが選択したキャラクターで異なるコンテンツを展開した例などがあるという。
□新サービス「SARF+」を開始
同社はこのほど、博報堂(水島正幸社長、東京都港区)と音声AR事業で連携し、知的財産(IP)を組み合わせた音声ARコンテンツの企画制作からマネタイズまで一貫した運用が可能な新サービス「SARF+」の提供を開始した。SARFの機能を拡充したサービスで、利用者情報の分析などのマーケティング機能とコンテンツの課金機能を付与した。
同社の持つさまざまなIPを起用したPRイベントやプロモーション、インバウンド施策など、音声ARコンテンツを軸とした企業価値の最大化とオーバーツーリズムなどの観光課題の解決、地域の賑わい創出などを行っていきたい考え。
事業開発グループの内藤桂ゼネラルマネージャーは、グループのIP最大活用と今回のようなパートナーシップの構築により、「音声ARを普及・浸透させ、音声ARでヒットコンテンツを生み出したい」と意気込んだ。
なお、サービス開始を記念した第1弾企画として、10月11日(金)~27日(日)まで、音声ARを活用したデジタルスタンプラリー「LDH SOUND STATION」を実施する。10月26(土)~27日(日)に大阪府大阪市のヤンマースタジアム長居で開かれる「LDH LIVE-EXPO2024」に連動したもので、Osaka Metoroの協力で8駅に設置された音声スポットを巡る。21人のアーティストの音声コンテンツが設置してあり、すべてを再生するとオリジナルのスマートフォン専用壁紙がもらえる。
今後は、2025年にワン・パブリッシングが発行するオカルト情報誌「ムー」と連携し、ムーの世界観で地域を周遊するコンテンツを展開する予定という。