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日本国際観光学会「旅行業の人材育成」セミナー開く 「人間力」めぐり熱い議論交わす

2024年10月11日
編集部:増田 剛

2024年10月11日(金) 配信

(左から)島川崇氏、田川博己氏、神田達哉氏

 日本国際観光学会(崎本武志会長)は9月26日(木)、ツーリズムEXPOジャパン2024の会場(東京ビッグサイト)で、「今後の旅行業の人材育成」をテーマにセミナーを開いた。JTB相談役の田川博己氏の講演、さらに神奈川大学国際日本学部教授の島川崇氏、宝塚医療大学観光学部准教授の神田達哉氏も加わり、3氏によるツーリズム産業における人間力などについて、熱い議論が交わされた。

日本国際観光学会の崎本武志会長

 冒頭、崎本会長は「当学会の柱は『業界との結びつきを大切にする』こと。コロナ後、過渡期にある旅行業、観光業の人材育成をテーマに、業界を代表する3氏から貴重な卓見を披露していただける。肝に銘じながら今後の観光人材を担う若い世代を育てていきたい」とあいさつした。

ツーリズム産業への脱皮が必要

 基調講演に登壇した田川氏は、「パンデミックが始まって人流が止まったとき、改めて人流の大切さを感じた」と切り出し、これまでの日本の観光産業は人流について多くの議論がなされてこなかったことを指摘した。

基調講演で登壇した田川博己氏

 観光産業とは「T&T」、つまりTravel(旅行)&Tourism(移動・交流)であり、新たな旅行業について田川氏は「ツーリズム産業への脱皮が必要」との考えを示した。さらに「人々の流れを創出し、交流・消費を促すとともに、『新たな価値観、豊かなライフスタイルを創り出す活動』こそが、旅行業の源流」と述べた。

 観光立国の基本理念「住んでよし 訪れてよしの地域づくり」にも触れ、「2010年ごろからムードによって、まちづくりが観光地づくりとなってしまったが、パンデミックで一度リセットされた。まさに今、地域活性化には住民参加が不可欠であり、まちづくりに参加できる能力を持った人材が旅行業に必要」と持論を展開した。

 さらに「観光力は人間力」と述べ、「旅行会社の経営者は、人間力が増すための社員教育や人材育成をしてもらいたい。ツーリズム産業を目指す学生には、マイナスをプラスに転じることのできる逆転の発想など、柔軟な発想力や物語(シナリオ)の構想力を養ってもらいたい」と語った。

 島川氏と神田氏が加わった討論会は、同学会監事の辻野敬一氏、常務理事の矢嶋敏朗氏がコーディネーターを務めた。

 島川氏は、田川氏が語った「人間力」に強く共鳴。「とことんまで人間が介在することを追求しなければ、旅行業の価値は無くなっていく。観光産業もIT化、DX化が進むなかで、旅行会社が生き残っていくには、人間が関わることしかないのではないか」と力を込めた。

 大手旅行会社を中心に、コロナ禍でワクチン接種などBPOビジネスが本格的に始まった。「ワクチン接種の業務を任せるのは他産業でもいいのに、なぜ旅行業に委託されたのか」と島川氏は問い掛けた。「コロナ禍の不安に満ち、暗い世の中で、『これまでずっとお客様を喜ばせ、幸せにしてきた』旅行業の人材や未来への希望に期待したのではないか。旅行業に一番大事なのは、人を幸せにする人間力であり、今の旅行業が一番忘れているもの」と語った。

 神田氏は「企業が創った商品やサービスを消費者に押し付けるような価値提供の時代は終わった。ツーリズム産業も顧客や消費者と価値を共創していく視点が大事。価値共創を果たすことのできる人材を確保し、育成していくことが、田川さんが話された人間力を増すことにつながっていく」と述べた。

 田川氏は「旅行業界の目指すべき人間力という定義はまだ一致していない。もう一度業界の皆さんと考えていきたい」と語った。

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