復興は次のステップへ、マーケティングの段階に、田村観光庁長官
田村明比古観光庁長官は2月16日に開いた会見で、マーケティングを駆使した復興観光のステップアップや、ツアーオペレーターの規制の可能性など、これからの国内観光の展望や仕組みのあり方について語った。
3月11日で5年目を迎える東日本大震災からの復興観光について、田村長官は「東北の観光復興は、観光庁と復興庁が二人三脚の連携で進めている。今回、増額された予算についても執行は観光庁なので、観光と復興を一体的に進めることができる」と今年の復興観光への期待を述べた。また、これまでの「復興」という心情にスポットを当てた支援から、「地域ごとの特性を活かし、データに基づいてターゲットを絞り、マーケティングする段階に来ているのではないか」と復興観光の次なるステップの方向性も示唆した。
2月2日に日本旅行業協会(JATA)が観光庁に提出した訪日旅行に関する提言書についても言及した。提言のなかの1項目、ツアーオペレーター業の「品質認証制度」の活用促進については「ツアーオペレーターは訪日旅行の質の問題や、長野県・軽井沢スキーバス事故にも関係している」と述べ、今後のツアーオペレーターの規制の可能性を語った。旅行業法は消費者保護の観点からBtoCの取引を監督するもので、BtoBの取引を行うツアーオペレーターは業法外となる。「結果としてツアーの質や安全に問題が生じ、旅行者に影響を与えるのであれば、消費者保護の観点から議論があっても良い」と意向を示した。
議論が進む「民泊サービス」問題については、「当面の対策に合わせて抜本的な制度の見直しを検討する方向で進めている。大きな方向性はビジョン会議でも出していきたい」と現況を述べた。
訪日外国人観光客が注目されるなかで伸び悩む日本人の旅行需要についても触れ、「例年並みに戻ったがそれ以上のものではない」と評価したうえで、伸び悩みの要因は「旅行者個人の懐具合と旅行コストの兼ね合い」と推察、「とくに交通手段は国内旅行に関すればまだ高い」と述べた。合わせて宿泊施設の稼働率の好調から、宿泊料金の上昇傾向も関係しているとした。国内旅行の展望については「個人の所得や将来に向けた期待値が良くならなければならない。そうならないのであればLCCの普及など割安感のあるものがもっと出てきてほしい」と語った。旅館サービスの改善についても述べ、「一部の高級層のサービスは別として、旅館の宿泊体験がマンネリ化している感じがする。改善の余地は大いにあるので取り組んでいきたい」と述べた。