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【特集 No.662】清掃の内製化 客室を「ゼロセッティング」へ

2024年11月1日
編集部:増田 剛

2024年11月1日(金) 配信

 旅館やホテルの多くは、料理や接客(おもてなし)などのサービスは日々磨き込みを行っているが、同様に大事な商品である客室などの清掃については、十分に手が付けられていない状況にある。工学博士の内藤耕氏は、経費の巨大な塊である「清掃」を内製化し、客室案内や、ラウンジでのサービス、洗濯などと連動できるシフトを組むことにより、労働生産性の改善につながっていくと語る。客室の「ゼロセッティング」化など、顧客満足の最大化と併せた、宿泊業における「最適な清掃方法」を探る。

【聞き手=本紙編集長 増田 剛】

工学博士・内藤耕氏インタビュー 客室案内が最も重要 “チェック”兼ね即座に対応

工学博士 内藤耕(ないとう・こう)氏

 旅館やホテルといった宿泊業が提供している商品は、大きく「料理」「接客(おもてなし)」「風呂」「客室」の4つに分類できます。

 お客として、どの商品が一番大事かは人によって異なりますし、宿泊業としての業態によっても異なってきます。しかし、一般的には、とくに温泉旅館に宿泊したことを誰かに話そうとするときに、まず「温泉に行ってきた」と言い、それから「どこに泊まったか」と客室や風呂、そして最後に「サービスはどうだったか」といった接客(おもてなし)、料理などについて細かに語っていくパターンが多いような気が個人的にします。

 このように考えると、とくに温泉旅館では、これを「温泉」や「風呂」→「客室」→「接客(おもてなし)」→「料理」という順番で商品を捉えることができます。

 一方、これまで長く、そして今もそうですが“グルメブーム”が続いています。このため、経営者は自館をアピールするときに、大きな商品の柱として「料理」に関心が集中しがちですが、「客室」や「風呂」といった施設・設備も同様に、宿泊業にとって大きな商品であることに違いはありません。

 ある旅館のホームページのアクセスログを確認する機会があり、驚くことに一番多く見られていたページは料理ではなく、客室でした。旅館では滞在中に客室にいる時間が最も長いため、お客は「どのような客室なのか」「衛生的なのか」といったことを気にしているのかもしれません。このように客室は旅館にとって重要な商品であることに気づかされます。 

 料理や接客(おもてなし)のサービスは、商品としてどのように磨き込みをしていけばいいかは、わかりやすいですが、風呂や客室はどうでしょうか。

 この風呂や客室を商品として日々磨き続ける具体的な方法は、メンテナンスです。このメンテナンスとは「保守」「保全」などと翻訳されますが、宿泊業では、「清掃」やお客が使うタオル・浴衣などの「洗濯」といった業務のことを一般的に指します。

 このように捉えますと、宿泊業にとって施設・設備の清掃は、とても大事な業務となります。そして、この清掃や洗濯方法について具体的な検討がまだ十分に手が付けられていません。

 また、それは経費の巨大な「塊」であるにも関わらず、その内容について、多くの宿泊業の経営者はあまり関心を向けていないように見受けられます。

 コロナ禍が明けましたが、現在、宿泊業の経営は依然として厳しい状況にあります。まずはお客を増やし、売上の拡大に努力されていることは十分に理解できます。

 一方、最近の人手不足や資材費の高騰から、仮にお客が増えたとしてもそれ以上にスタッフを増やすこととなり、結果としてそれ以外も合わさって経費もそれ以上に増えてしまい、増収が利益率の改善につながらない状態に陥ってしまう施設が散見されます。

 増収が確実に利益率のアップにつながる流れを作っていくためには、客数増や宿泊料金のアップといった外部需要をさらに取り込むだけでなく、固定費(損益分岐点)も同時に低減していく「労働生産性」の向上への努力も必要になります。

 ――なぜ多くの旅館がこの重要なメンテナンス業務に関心を持ってこなかったのでしょうか。

 非常に大きな経費の塊であるにも関わらず、……

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