【精神性の高い旅~巡礼・あなただけの心の旅〈道〉100選】-その43-誕生寺&天津神明宮 日蓮上人誕生地の神仏旅(千葉県鴨川市) 香りや風も良い刺激に 穏やかで安らかな心へ
2024年11月10日(日) 配信
東京から東南の方角にある房総半島の外房、太平洋側に面した千葉県鴨川市は、偉大な神仏のお二方に大変ゆかりの深い土地。三重の伊勢にいらっしゃる、日本の総鎮守の伊勢神宮・ご祭神のアマテラスオオミカミ様と、そして日蓮宗の開祖の日蓮上人です。今回は、日本を代表する神仏の旅の精神性を知る旅にできればと思います。
私自身、何度も鴨川市に旅していますが、どんなに心身のバランスが崩れていても、この土地を訪れると、穏やかで安らかな心を取り戻せます。青く澄んだ海や瑞々しい緑の息吹に包まれながら、ゆっくりと静かに時が流れる空気感がたまらなく心地が良いのです。
誕生寺(たんじょうじ)は、環境省認定の「かおり風景100選」に、「誕生寺の線香と磯風」として選ばれています。海や緑の色を感じるだけでなく、香りや風に触れる感覚にも良い刺激を与えてくれるでしょう。五感全体を快感に満ちる旅が満喫できそうです。
さて、日蓮上人は1222(承久4)年、鴨川市の安房小湊に、漁師の子としてご誕生されました。そのとき、海上には美しい蓮の花が咲いて、鯛の群れが海面に押し寄せて、生家の庭には泉が湧き出したという、おめでたい奇跡「三奇瑞(さんきずい)」という伝説になっています。
誕生寺は、JR安房小湊駅からバスで5分程度の距離です。この日蓮宗の大本山である誕生寺は、1276(建治2)年に日蓮上人の弟子の日家上人が建立したと伝えられています。日蓮上人の生家跡に建てられたのが始まりのようですが、2度の津波と地震に見舞われて、現在の場所へ移転されました。幼少期の日蓮像、日蓮上人坐像を安置する祖師堂など建造物が多数あります。県内最大規模の仁王門もあり、中を散策していると精神が引き締まるような感覚になります。
日蓮宗では、朝夕2回、法華経を唱えるのが一般的です。日本仏教の開祖ともいうべき聖徳太子は、とりわけ法華経を重んじました。聖徳太子を尊敬する、滋賀の比叡山延暦寺を開いた最澄は、法華経を根本経典としました。この比叡山延暦寺は、若き日の日蓮上人も学んだ場所です。
法華経の法華というのは「蓮の花」です。大乗仏教の象徴も「蓮の花」。蓮池というのは、きれいではない泥の池です。その泥の池から出ながら、実に美しい清浄な花を咲かせること、それが法華、すなわち蓮の花なのです。どんなに煩悩の沼でもがき苦しんでいても、1つのひらめきや悟りのようなものを得れば、解放されて、美しい花を咲かせることができて、再出発できるということでしょう。誕生寺を訪れれば、清く澄んだ空気を吸って、こんな心境になれるのかもしれません。
次にJR安房小湊駅からタクシーで、5分程度で到着する房州・伊勢の宮として名高い天津神明宮(あまつしんめいぐう)も、日蓮上人ゆかりのお宮。ご祭神は、アマテラスオオミカミ様、トヨウケノオオミカミ様など多数です。神社の東側にある、なぎなみ山の頂に、アマテラスオオミカミ様の親神様でいらっしゃる、イザナギ様とイザナミ様もお祀りされています。
日蓮上人は、天津神明宮をとても尊崇され、修行地の清澄へお通りになられる際には必ずご参拝されたようです。伊勢神宮は日本で活躍するなら、必ず定期的にご参拝されると良いというお話を聞いたことがあります。それも伊勢神宮と出雲大社にバランスよく、ご参拝するのがベストとのこと。なかなかご参拝できない方は、太陽の躍動的なパワーのアマテラスオオミカミ様や、良縁の出雲のオオクニヌシ様が祀られている近くの神社へお参りすることも、おすすめします。日蓮聖人も、アマテラスオオミカミ様の大いなるパワーで、後世に残る宗派を開いたのかもしれません。
■旅人・執筆 石井 亜由美
カラーセラピスト&心の旅研究家。和歌山大学、東洋大学国際観光学部講師を歴任。グリーフセラピー(悲しみのケア)や巡礼、色彩心理学などを研究。